私が出会ったメンタルヘルス対策と経営の融合エピソード2025 担当者が経営層を動かし、経営層が社員を支える
- AKI IMAIZUMI

- 5 日前
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更新日:19 時間前

今年も残りわずかとなりました。この一年、様々な組織の皆さまと関わる中で、「人の想いが組織を変える瞬間」に何度も立ち会うことができました。
その中でも、特に印象に残った2つのエピソードをご紹介します。
■ 若手人事担当者が“あきらめずに動き続ける”からこそ、経営層が動いた
1つ目は、ある企業の20代人事担当者の事例です。数年前からメンタルヘルスケア対策をご支援している企業で、その担当者さまは人事労務業務の一環としてこの領域を任されていました。
初めてお会いしたのは、ストレスチェックの集団分析結果をご報告した時のこと。転職して間もないにもかかわらず、会議では誰よりも熱心に質問を重ね、後日、改善策を即座に検討して実行する真摯さと行動力が強く印象に残りました。
それから数年。担当者さまは多忙な日々の中でも専門知識を学びながら施策を継続的にブラッシュアップしてきました。
現在では、遠隔地の社員にも気を配り、様々な視点から社員の状況を把握して、変化に気づけば自ら声をかけ、必要に応じてカウンセラーや産業医につなぎ、その後のフォローも丁寧に行っています。
その成果として、現場では上司や同僚が変化に気づくと、担当者さまやカウンセリングにつなげてくれるケースが増え、ラインケアの視点が組織全体に広がり始めています。
そして先日、今年度のストレスチェック報告では、オンライン参加予定だった経営者が会場に直接お越しくださいました。
報告後、経営層の方々からは次のような言葉が飛び交いました。
「全員が大切な社員で、誰一人燃え尽きにさせたくない」
「気にかけることに尽きる」
「変化に気づいたら声をかける」
「そのためには、まずは顔を見てあいさつだよ」
経営層と担当者が活発に意見を交わす姿を見て、胸が熱くなりました。
メンタルヘルス対策は、右肩上がりに成果が見えるものではなく、費用対効果も測りづらい領域です。社内理解を得るのも容易ではありません。
それでも、役割を全うしようとする担当者の真摯な姿勢が、最終的に経営層の意識を動かしたのだと確信しています。
■ 経営層が社員の人生に寄り添う“覚悟の経営”
もう一つの事例は、経営層が社員の人生に真摯に向き合う企業です。
総務責任者である社長夫人とお話しするたびに伝わってくるのは、行動の奥にある「覚悟」です。
同社では社員アンケートを実施すると決めた際、結果をすべて公表し、社員からの要望一つひとつに対して、実現が難しいものも曖昧にせず必ず回答を行います。
そして実現可能なものから着実に取り組む姿勢には、深い決意が感じられます。
日常的にも、社員からの相談には経営層自ら面談を行い、管理職任せにしない「直接対話」が根づいています。
そのため、社員が経営層に「同僚が心配だ」と知らせてくれることもあり、経営層と社員との距離の近さが感じられます。必要に応じてマネジメント層への厳しいフィードバックも行うなど、全ての対応に“逃げない姿勢”が貫かれています。
特に印象的だったのは、ある社員が人生の転機を迎えた際の対応です。
落ち込む様子に気づいた管理職の報告を受け、まずは総務責任者が本人の話しをじっくり聴き、その後、社長、常務、総務責任者の3名が集まり、社員本人やご家族の状況を踏まえながら、1人の社員そして全社員の将来を深謀遠慮し、会社としてあるべき支援の姿を徹底的に議論していました。
常務が折に触れ語られる「社員の人生を豊かにするために会社がある」という言葉を体現する場面でした。
本気の支援を受けた社員は今も同社で健やかに活躍されています。
■ 共通するのは「行動力」と「長期視点」
この2社に共通するのは、いずれも従業員100名未満の中小企業であり、「行動が早い」「長期視点で諦めない」という、シンプルでありながら容易ではない実践を続けている点です。
そして、中小企業だからこそ、担当者の想いが経営層に届きやすく、経営層の想いも社員に伝わりやすいメリットをいかしてコミュニケーションを恐れないことが、結果として、人や組織を動かしています。
メンタルヘルス対策は、一朝一夕で成果が見えるものではありませんが、担当者の真摯で粘り強い取り組みと、経営層・社員の理解がかみ合うことで、「誰かが誰かの変化に気づき、声をかけ、つなげる」・・・そんな“組織まるごとラインケア”が生まれるのだと学びました。
このように、様々な企業と出会いながら、私自身が多くを学ばせていただいています。
■最後に
メンタルヘルスケア対策の担当者は、“ひとり担当者”であることも少なくありません。
自社に適した施策を思い描いても、日々の業務や課題、個別対応に追われ、諦めそうになることもあるでしょう。
そんな時こそ、外部リソースを活用してください。
共に考え、取り組み、結果から学び合う伴走者になります。




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