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230年前の江戸に、中小企業の勝ち筋があった~大河ドラマ『べらぼう』蔦屋重三郎に学ぶ、3つの発想転換

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「これ、Amazonじゃん!」

2025年大河ドラマ『べらぼう』、見てますか?

先週、クライアントの製造業経営者とこのドラマの話になったんです。そしたら彼が突然こう言いました。

「これ、完全にAmazonじゃないですか」

主人公の蔦屋重三郎。江戸時代の本屋さん…いや、正確には「版元」という出版業者です。

「蔦屋って、自分で本を書いてないんですよ。絵師を集めて、作家を育てて、書店をネットワーク化して。完全にプラットフォームビジネスじゃないですか!」

その瞬間、私も気づきました。蔦屋重三郎がやっていることって、現代のビジネスモデルそのものだ。しかも230年前に。

DXコンサルタントとして中小企業の経営改革を支援してきた私が、江戸時代の本屋さんから学ぶことになるとは。

でも、学びました。しかも、めちゃくちゃ実践的な内容でした。

今日は、中小企業が今すぐ使える「蔦屋流・発想転換の技術」を3つに絞ってお話しします。

〇発想転換1:「何を売るか」より「何をつなぐか」

本屋なのに、本を売らない?

蔦屋重三郎を「本屋の主人」だと思ってる人、多いですよね。違うんです。


  • 普通の本屋:「良い本を仕入れて、店頭に並べて、売る」

  • 蔦屋:「絵師を発掘して、作家を育てて、彫師や摺師とつないで、書店網を組織化して、読者に届ける」


彼は本を売る人じゃなくて、人と人をつなぐ人だったんです。

喜多川歌麿って知ってます?超有名な浮世絵師。でも蔦屋に出会う前は無名でした。蔦屋が才能を見抜いて、新ジャンルを開拓させて、売る仕組みを作った。

歌麿が売れれば蔦屋も儲かる。書店も潤う。読者も喜ぶ。みんなハッピー。これがプラットフォームです。


町工場が「つなぐ人」になった話

実はこれ、中小企業でもできるんです。

ある町工場の話。従業員15名、金属加工をやってる会社。社長は長年「うちの技術で勝負だ!」って頑張ってました。でも正直、大手には敵いません。受注は減る一方。

ある日、社長が気づいたんです。「俺、地域の加工屋のこと、めちゃくちゃ詳しいんだよね」

A社は板金が得意。B社は溶接が得意。C社は精密加工が得意。みんな小さいから単独では大きな仕事が取れない。

社長は発想を転換しました。「自分は作る人じゃなくて、つなぐ人になろう

地域の工場10社をネットワーク化。顧客から依頼が来たら最適な工場に振り分ける。複数工程が必要なら、複数社をコーディネート。自分は調整役としてマージンをもらう。

結果、どうなったか。

大手企業から「あの社長に相談すれば何とかなる」って言われるようになりました。ネットワーク全体で受注が増えて、自社も新しい収益源を得ました。


デザイン事務所も同じ発想で変わった

従業員5名のデザイン事務所。小さいから大規模案件に対応できない。でも社長はフリーランスのデザイナーを100人以上知ってる。

自分はデザイナーのプロデューサーになろう

そう決めて、案件に応じて最適なチームを編成するようになりました。結果、以前は断っていた大規模案件も受注できるようになった。デザイナーたちも安定受注。


中小企業向けチェックリスト

自社は「誰と誰」をつなげられるか?

業界内で自社がよく知っている「人・会社」は?

困っている人と、解決できる人を知っているか?

自分がいなくても、そのつながりは生まれるか? → Noなら、そこにビジネスチャンスがある


〇発想転換2:商品じゃなくて「体験」を売る

江戸時代の握手会ビジネス

ドラマで衝撃的だったシーン。蔦屋が歌麿に看板娘の浮世絵を描かせたんです。絵が江戸中で評判になって、男性客が「その娘に会いたい」と店に殺到した。

茶屋なら茶を買い、団子屋なら団子を買って、看板娘と言葉を交わす。また明日も来る。

見た瞬間、私は思いました。「これ、AKBの握手会じゃん!」

江戸の男性客、本当に団子が食べたかったんでしょうか?違いますよね。看板娘と話したかった。

団子 = 食べ物 じゃなくて、 団子 = 会話のチケット なんです。


部品屋さんが「パートナー」になった

ある部品メーカー、従業員30名。価格競争で疲弊してました。

社長が考えました。「お客さん、本当に部品が欲しいのかな?」

違ったんです。お客さんが欲しいのは「課題の解決」。部品はそのための手段でしかない。

社長は事業の意味を変えました。


従来:「部品を売る会社」

新定義:「お客さんの課題解決パートナ


見積もり段階から変えました。単に価格を出すんじゃなくて、「こういう課題がありますよね。こうすれば解決できますよ」って提案する。

納品時には使い方を説明。アフターフォローで次の課題を聞き出す。定期訪問で信頼関係を作る。

何が変わったか。価格で選ばれなくなったんです。「あの会社に相談したい」で選ばれるようになった。単価は上がり、リピート率も上がり、利益率が大幅改善。

商品(部品)は同じ。でも体験が変わったんです。


システム開発会社の場合

従業員20名のシステム開発会社。「安くて早い」で勝負してましたが、価格競争で限界でした。

発想を転換しました。


従来:「システムを作る会社」

新定義:「業務改善の伴走者」


開発前に、徹底的に業務を見ます。「本当にシステム化が必要ですか?運用変更で解決しませんか?」って正直に言う。

システム導入後も、定期訪問。「使いにくい部分ないですか?業務が変わったら教えてください」

お客さんが言うようになりました。「あの会社は、うちのことを一番わかってる」

単価は1.5倍になり、紹介も増えました。


中小企業向けチェックリスト

顧客は本当に何を「感じたい」のか?

商品購入の前後で、何が変わるべきか?

「この会社じゃないとダメ」と言われているか?

価格ではなく「関係性」で選ばれているか?


〇発想転換3:「情報」を資産にする

蔦屋が最強だった理由

蔦屋重三郎の最大の武器は何だったか。優れた絵師?流通網?資金?

違います。「情報」です。

蔦屋は知っていました。何が売れるか。誰が次に来るか。市場が何を求めているか。

この情報があったから、リスクを取って投資できた。外れが少なく、ヒット率が高かった。


配送業者の「地図」が資産になった

従業員25名の配送業者。毎日街中を走ってると、気づくんです。

「この時間帯は、このエリアが混む」

「雨の日は、このルートが渋滞する」

「この曜日は、このエリアの荷物が多い」

これ、大手も持ってない地域密着型の情報です。

この業者、情報をExcelに記録し始めました。時間帯別の配送時間、天候と渋滞の関係、季節変動のパターン。

データが溜まると、パターンが見えてきました。

「この条件なら、このルートが最速」

配送効率が20%向上。さらに、この情報を活用して新サービスを始めました。

「最速ルート提案サービス」。地域の運送業者に情報提供。

自社の効率も上がり、情報提供料という新収益も得ました。


製造業の見積もりデータ分析

従業員40名の金属加工業。過去5年分の見積もりデータを分析しました。

・どんな案件の受注率が高いか ・どんな案件で失注しているか ・納期と価格の相関 ・リピート発注のパターン

分析結果から発見がありました。

「通常納期(2週間):受注率50%、単価普通」

「短納期(3日):受注率75%、単価1.5倍」

短納期案件は単価が高くても受注率が高い。なぜなら対応できる業者が少ないから。

戦略を変えました。短納期対応を強みとして前面に出す。設備投資も短納期対応のために。

結果、利益率が大幅改善。同じ仕事量で収益が1.5倍になりました。


BtoB商社の顧客データ活用

従業員35名の専門商社。顧客との商談内容を記録し始めました。

・どんな悩みが多いか

・業種別の傾向

・成約までの接触回数

・リピート購入のきっかけ

データを分析すると、発見がありました。

「初回訪問から1週間以内に2回目の接触:成約率80%」

「1週間空くと:成約率30%」

理由:熱が冷める。「やっぱり今のままでいいか」と思ってしまう。

戦略を設計。初回訪問→3日後→1週間後の3回接触スケジュール。これをシステム化。

成約率が50%から75%に上がりました。


Excel 1枚から始めよう

難しく考えなくていいんです。まず、Excel 1枚。

記録すべき情報(中小企業版)

□ 顧客からの問い合わせ内容とパターン

□ 成約した理由、失注した理由

□ リピート購入・継続契約のきっかけ

□ クレーム内容と対応(パターン化できる)

□ 時期による需要変動

□ 競合との比較で選ばれた理由

これを3ヶ月続けて、月1回30分振り返る。

「何かパターンないかな?」

小さな発見でいい。それを一つだけ試す。効果を見る。繰り返す。

蔦屋重三郎はデジタルツールなんて持ってませんでした。でも情報を記憶し、分析し、戦略に活かした。

私たちにはExcel、Kintone、Notionがあります。蔦屋より圧倒的に有利です。


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〇中小企業こそ「蔦屋モデル」が効く理由

なぜ中小企業に蔦屋モデルが向いているのか。3つの理由があります。

理由1:意思決定が速い

大企業は会議と承認に時間がかかる。中小企業は社長が「やろう」と決めたら明日から動ける。

蔦屋も小さな書店から始めました。でも意思決定は速かった。市場の変化に即座に対応できた。

理由2:顧客との距離が近い

大企業は顧客の顔が見えない。中小企業は社長が直接顧客と話せる。

蔦屋も吉原に店を構え、顧客(文化人、商人)と直接対話していました。だから市場のニーズを誰より早く掴めた。

理由3:柔軟に変われる

大企業は組織が大きく、変革に時間がかかる。中小企業は「明日から変える」ができる。

蔦屋も既存ルートを無視して独自流通を作れたのは、小さかったからです。


〇明日からできること

難しく考えなくていいです。まず一つだけ、やってみましょう。

ステップ1:自問する

「うちは本当に何を売ってるんだろう?」

商品?サービス?それとも安心?信頼?課題解決?

答えが見つかったら、社員と共有してください。

「うちは○○を売る会社だ」

ステップ2:Excel 1枚を作る

顧客対応記録。問い合わせ内容、成約理由、失注理由。それだけでいいです。

3ヶ月後、必ずパターンが見えます。

ステップ3:小さく試す

見つけたパターンで、一つだけ戦略を変えてみる。全部変える必要はありません。一つだけ。

効果を測定して、良ければ続ける。ダメなら次を試す。


〇あなたの中にも蔦屋重三郎がいる

蔦屋重三郎は特別な人間じゃありませんでした。最初は資金も人脈も技術もなかった。

持っていたのは「発想を転換する力」だけ。

その力は、学べます。訓練できます。実践できます。

大河ドラマ『べらぼう』を見ながら、自分の事業を重ね合わせてみてください。

令和の蔦屋重三郎は、あなたかもしれません。

さあ、やりましょう。

K&Aプロジェクトでは、中小企業のDX推進と経営革新を支援しています。「どこから始めればいいか」という方、お気軽にご相談ください。一緒に考えましょう。


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