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公安と別班、あなたの会社に必要なのはどちらか――『VIVANT』から考える組織の多様性

8 時間前
読了時間: 8分

ー「良い組織」に正解はない。仕事が違えば、リーダーも、人材も、管理方法も変わるー

〇序章 野崎と乃木、どちらを部下にしたいですか?

現在放送中で、大きな話題を呼んでいるテレビドラマ『VIVANT』には、二つの非常に優秀な組織が登場する。

一つは公安。警察組織の中にあり、大規模な人員と情報ネットワークを持つ。組織として動き、情報を共有し、手続きを踏みながら成果を出す。

もう一つは別班。陸上自衛隊の中に極秘で存在するとされる少数精鋭の特殊チームだ。少人数、高い個人能力、迅速な判断、そして徹底した秘匿が特徴である。

公安には佐野がいて、野崎がいて、東条がいる。別班には櫻井がいて、乃木がいて、太田がいる。どちらも圧倒的な成果を上げる。しかしその仕事の仕方は、驚くほど違う。

では、この二つを「会社の組織」として見てみたらどうだろう。

あなたの会社に必要なのは「公安型」だろうか。それとも「別班型」だろうか。

そして——本当に、どちらか一方だけを選ぶ必要があるのだろうか。


第1章 公安は「組織」で戦い、別班は「個人」で戦う

まず、二つの組織の違いを整理しよう。


公安型

別班型

規模

大規模・階層型

少数精鋭・セル型

強さの源泉

組織力・連携

個人能力・専門性

情報

共有・蓄積・記録

必要最小限・秘匿

意思決定

組織的・手続き重視

迅速・現場委任

求める人材

チームプレイヤー

スペシャリスト

管理スタイル

標準化・統制

裁量・委任

リスク

硬直化・意思決定の遅さ

属人化・統制の難しさ

ここで重要なことを先に言っておく。

「公安型=古い、別班型=新しい・優れている」ではない。

給与計算、品質管理、安全管理、介護施設の日常業務——これらを「各自の判断で自由にやってください」では困る。ミスが命に関わる業務、法令遵守が必須の業務、定型的な品質を大量に保証しなければならない業務は、公安型の統制と標準化によってこそ安定する。


逆に、新規事業、DX推進、危機対応、研究開発——これらに何重もの稟議と承認を要求したら、機会を逃す。環境が変化するなかで仮説を試す仕事、先例のない課題に対応する仕事は、別班型の裁量と迅速な判断があってこそ機能する。


問題は「どちらが優れているか」ではない。「その仕事には、どちらが合っているか」だ。


第2章 佐野と野崎、櫻井と乃木――リーダーと人材にも種類がある

■リーダーの違い

ドラマの中で、佐野と櫻井はそれぞれの組織のトップとして描かれる。

  • 佐野型リーダーは、組織を背負う。人員を動かし、情報を集め、部門間を調整し、部下を守り、組織として責任を取る。その強みは「組織という機械を動かす能力」にある。

  • 櫻井型リーダーは、判断を背負う。情報が不完全でも決断し、最適な人材を選び、権限を与え、任務中は現場に任せ、結果に責任を負う。その強みは「限られた情報で方向を定める能力」にある。

あなたの会社の管理職は、全員に同じリーダーシップを要求していないだろうか。100人を管理する工場長と、5人のDXチームを率いるプロジェクトリーダーに、同じ「管理職像」を押しつける必要はない。


■人材の違い

野崎と乃木の対比はさらに鮮やかだ。

  • 野崎型人材は、組織を使う能力が極めて高い。必要な専門家を呼び、情報を集め、部下を動かし、関係者と交渉する。自分ですべてやるのではなく、組織という力を引き出して成果を出す人だ。企業でいえば、優れたプロジェクトマネージャー、営業マネージャー、部門長に近い。

  • 乃木型人材は自己完結型だ。情報を自分で集め、自分で分析し、自分で現場に向かい、自分で判断する。企業でいえば、特定分野で他の追随を許さない超高度スペシャリスト、あるいは一人で完結する研究者や技術者に近い。


ここから、一つの重要な人事の問いが生まれる。

乃木を野崎の評価基準で評価してはいけない。

野崎を乃木の評価基準で評価してもいけない。

組織への貢献度、チームワーク、コミュニケーション能力——これらは野崎型の評価軸だ。乃木型の人材にこれを当てはめると、「優秀なのに評価されない」という事態が生まれる。そしてその人材はやがて組織を去る。


第3章 東条と太田――専門家の使い方まで違う

公安側の東条と、別班側の太田は、どちらも「専門家」として登場する。しかしその役割の意味が異なる。

  • 東条型専門家は、組織能力を底上げする存在だ。情報分析、法的判断、技術的知識——その専門性が組織全体の質を高める。企業における情報システム部門の優秀なエンジニア、法務担当者、品質管理の専門家がこれに近い。

  • 太田型専門家は、突出した個人能力そのものに価値がある。チームに貢献するためでなく、その人にしかできないことをするために存在する。企業でいえば、特定分野の第一人者、あるいは外部から招く独立系の高度専門家に近い。

会社には、どちらの専門家も必要だ。そして重要なのは、どちらとして採用したのかを、組織が明確にしておくことである。「組織への統合を期待した採用なのか」「突出した能力そのものを買った採用なのか」——この区別が曖昧だと、専門家も組織も、どう付き合えばよいか分からなくなる。


第4章 会社は一つの組織モデルで統一する必要はない

ここまで読んで、「自分の会社はどちら型か」を考えた方も多いだろう。しかし本当の問いは、そこにはない。

会社全体を「公安型」か「別班型」のどちらかに統一する必要は、そもそもない。

むしろ、同じ会社の中に異なる組織の形を共存させることが、現実の解である。

部門・機能

適した型

経理・財務・総務

公安型

製造・品質管理

公安型

安全管理・コンプライアンス

公安型

営業(既存顧客)

公安型+別班型

新規事業・新商品開発

別班型

DX・デジタル推進

別班型

危機対応・緊急プロジェクト

別班型

これが「組織の多様性」の本来の意味だ。人を多様にするだけでなく、組織の形そのものを、仕事の性質に合わせて多様にすることである。



第5章 最悪なのは「型の不一致」だ

組織設計で最も危険な失敗は、統制か自由かではなく、型の不一致だ。

例えば、優秀な技術者を別班型人材として採用したのに、公安型の管理を当てはめてしまう。

毎朝の朝礼、細かな日報、少額経費の稟議、すべての行動に上司承認、全員同じ評価制度——これでは採用した意味がなくなる。別班型人材は「ここでは何もできない」と判断し、組織を去る。

逆も同じだ。定型業務の現場で、「一人ひとりが経営者意識を持って自由に動いてください」と言い、ルールまでなくしてしまう。結果として品質がばらつき、ミスが増え、現場は混乱する。

問題は「統制か自由か」ではない。その仕事に必要な統制と自由を、正しく設計できているかどうかだ


〇あなたの部署は公安型? 別班型?

最終章の前に、一度立ち止まって考えてみてほしい。

次の6つの問いに「はい/いいえ」で答えてみよう。


  1. 業務の手順が標準化されており、誰がやっても同じ品質を保てることが重要だ

  2. 失敗が許されない、あるいは一つのミスが大きな影響を及ぼす業務が中心だ

  3. 法令、規程、契約など守るべきルールが多い

  4. 情報は関係者全員と共有・記録することが基本だ

  5. 意思決定の根拠を後から説明できることが求められる

  6. チームとして動くことが、個人の突出した能力より重要だ


「はい」が多いほど公安型が合っている部署だ。「いいえ」が多いほど別班型が合っている。そしてどちらとも言い切れないなら、その部署はちょうど過渡期にあるか、両方の機能を担っている可能性がある。


〇最終章 「良い会社」ではなく「目的に合った会社」をつくる

VIVANTに戻ろう。

公安が別班になればよいわけではない。別班が公安になればよいわけでもない。

公安には公安の仕事がある。別班には別班の仕事がある。だからこそ必要な人材も、リーダーの形も、権限の範囲も、情報共有の方法も、違う。

そして、この問いの答えは最初から決まっていた。

あなたの会社に必要なのは公安型か、別班型か。

答えは——仕事の性質によって、両方だ。

「良い組織モデル」を探すことより、「この仕事には何が必要か」を問うことの方がはるかに重要だ。流行の経営理論も、他社の成功モデルも、そのまま自社に当てはまるとは限らない。

組織の多様性とは、人を多様にすることだけではない。「人が成果を出せる組織の形」そのものを多様にすることである


組織の「詰まり」を可視化する

「制度は整っているはずなのに、なぜか現場で機能しない」

公安型の管理で別班型の仕事をしようとしていないか。別班型の文化で公安型の業務を回そうとしていないか——この「型の不一致」は、組織の"詰まり"として現れることが多い。

弊社では、こうした組織の見えない課題を4つの視点から診断する組織のコンディショニングチェックを提供しています。整っているはずの仕組みがなぜ現場で機能しないのか、その"詰まり"を可視化し、次の一手を考えるための材料を提供します。無料・約5分・20問で回答できます。


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本記事は、中小企業における組織・人事マネジメントの改善を支援するコンサルタントの視点から執筆しています。ドラマ『VIVANT』の設定・登場人物はTBSの著作物です。本記事は組織論の考察を目的とした評論であり、作品の内容を批評・解説するものです。




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