公平を実現するために、マネージャーがやるべきシンプルなこと――部下に毎日「+6秒」目を向ける

前回の記事では、「平等」と「公平」の違いについて考えました。
公平な組織とは、全員をまったく同じように扱う組織ではありません。
共通のルールを大切にしながら、一人ひとりの能力や役割、状況、そして貢献の違いを認め、合理的に対応していく。
それが、私たちが目指すべき「公平な組織」ではないでしょうか。
では、その公平さを、実際の職場でどのように実現していけばよいのでしょう。
・制度を整えること。
・評価基準を明確にすること。
・仕事や権限を適切に配分すること。
これらをいかすために必要なことを産業カウンセラーの視点で考えてみました。
今回は、忙しいマネージャーにも、今日から始められる、とてもシンプルな方法をご紹介したいと思います。
毎日、部下に「+6秒」目を向ける
私がおすすめしたいのは、
毎日、今より+6秒だけ、部下に目を向けることです。
特別な面談を増やす必要はありません。
毎日、長時間話をする必要もありません。
・朝、+3秒。
・夕方、+3秒。
一日、たった6秒です。
朝の「+3秒」
朝、部下が職場に入ってきたとき。
「おはよう」
と、いつものようにあいさつをする。
そのとき、今までより少しだけ、相手に目を向けてみてください。
+3秒。
表情はどうだろう。
声のトーンは、いつもと同じだろうか。
歩き方や動き方に、何か違いはないだろうか。
もちろん、3秒見ただけで、その人の気持ちが分かるわけではありません。
「今日は元気がない」
「何か悩みがある」
と判断する必要もありません。
ただ、その人を見る。
そして、
「いつものこの人」を知る。
まずは、それだけです。
夕方の「+3秒」
そして、一日の仕事が終わり、部下が職場を出るとき。
「お疲れさま」
と声をかける。
そのあと、もう少しだけ。
+3秒、その人に目を向けてみる。
帰るときの表情。
歩く様子。
後ろ姿。
朝はいつもの様子だったのに、帰る頃には明らかに疲れている。
いつもは周囲に声をかけながら帰る人が、今日は一人で静かに帰っていく。
そんな小さな違いが見えることがあるかもしれません
ここでも、答えを出す必要はありません。
ただ、
「いつものその人」と比べてみる。
それだけです。
「+6秒」が、その人の“らしさ”を教えてくれる
人の変化に気づくためには、まず、その人の「いつも」を知らなければなりません。
いつも明るくあいさつをする人。
口数は少なくても、仕事にはとても丁寧に向き合う人。
忙しいときほど周囲に気を配る人。
困っていても、自分からはなかなか助けを求められずに居心地悪そうな人。
一人ひとりに、その人らしさがあります。
しかし、普段から目を向けていなければ、その人が変化しても気づくことはできません。
だから、
変化を探す前に、その人の「らしさ」を知る
毎朝の+3秒。
毎夕の+3秒。
その小さな積み重ねによって、
「この人は、普段どんな表情をしているのか」
「忙しいとき、どんな様子になるのか」
「この人らしい状態とは、どんな状態なのか」
が、少しずつ見えてきます。
そして初めて、
「あれ? 今日は少し違うかもしれない」
という小さな変化をキャッチできるようになります。
ただし、「観察」と「思い込み」は違う
ここで、とても大切なことがあります。
部下に目を向けることは、部下を勝手に判断することではありません。
「今日は元気がないから、何か悩んでいるのだろう」
「最近静かだから、仕事に不満があるのだろう」
「表情が暗いから、やる気がないのだろう」
こうした判断は、時に大きな思い込みにつながります。
私たちができるのは、まず、
「いつもと少し違うように見える」
ということに気づくことまでです。
その先に必要なのは、本人の話を聴くことです。
「今日は少し疲れているように見えたけれど、大丈夫?」
「最近、少し忙しそうだけれど、困っていることはない?」
「私の気のせいだったらいいのだけれど、少し気になったので」
そんなふうに声をかけてみる。
そして、本人が話してくれたことを、まず聴く。
観察は、理解の入り口です。
しかし、観察だけで相手を理解したつもりになってはいけません。
本当にその人を知るためには、本人の言葉を聴く必要があります。
公平なマネジメントは、「一人ひとりを知ること」から始まる
前回の記事では、公平とは、全員を同じように扱うことではない、とお伝えしました。
一人ひとりの違いを認め、その違いを合理的に扱うこと。
そのためには、当然ながら、
「その人がどのような人なのか」
を知らなければなりません。
同じ仕事を任せても、新しいことに挑戦することで力を発揮する人もいます。
一方で、十分な説明や準備があることで、本来の力を発揮できる人もいます。
人前で評価されることが励みになる人もいれば、静かに努力を認めてもらうことを喜ぶ人もいます。
同じ言葉でも、励ましになる人もいれば、プレッシャーに感じる人もいます。
だから、公平なマネジメントとは、
全員に同じ対応をすることではありません。
一人ひとりを知ろうとし、その人に必要な関わり方を考えることです。
もちろん、好き嫌いや感情で対応を変えることとは違います。
共通のルールは守る。
その上で、一人ひとりの違いを理解し、合理的に対応する。
それが、公平なマネジメントにつながっていきます。
「分かっている」と思わない
長く一緒に働いていると、私たちはつい、
「彼はこういう人だから」
「彼女は大丈夫」
「何かあれば、自分から言ってくるタイプだ」
と思ってしまいます。
しかし、人は変わります。
置かれている環境も変わります。
昨日まで大丈夫だった人が、今日も大丈夫とは限りません。
だからこそ、
「知っている」と思わず、知り続けようとすること。
そして、
「分かっている」と思わず、本人の話を聴くこと。
日々の+6秒は、そのための小さな習慣です。
変化に気づく。
気になったら声をかける。
そして、勝手に答えを決めず、本人の話を聴く。
私は、産業カウンセラーとして、多くの働く人の話を聴いてきた経験から、この積み重ねが、職場の信頼関係をつくる大切な土台になると感じています。
「+6秒」は、忙しいマネージャーにもできる
「もっと部下とコミュニケーションを取りましょう」
と言われても、忙しいマネージャーにとって、それは簡単なことではありません。
会議がある。
判断しなければならないことがある。
自分自身の仕事もある。
だからこそ、まずは+6秒でいいのです。
朝、+3秒。
夕方、+3秒。
一日、たった6秒。
しかし、その6秒を毎日積み重ねることで、部下一人ひとりの「いつも」が見えてきます。
そして、その人らしさを知っているからこそ、小さな変化にも気づけるようになります。
公平な組織づくりは、例え制度改革が実現できなくても、
マネージャー一人ひとりが、
「今日も、この人に目を向けよう」
と思うことからも始まります。
「測る」「気づく」「聴く」
前回の記事では、組織の状態を把握するための一つの方法として、eNPSをご紹介しました。
eNPSは、組織に何か変化が起きていないかを把握するための体温計、いわゆる「センサー」です。
数値が下がっている。
ある部署だけ、他の部署と大きく違う。
以前と比べて、社員の評価が変化している。
そんな変化を捉えることができます。
一方、今回ご紹介した「+6秒」は、マネージャーが日々の職場の中で、一人ひとりの「らしさ」や小さな変化に気づくための方法です。
しかし、数値が変化した理由や、社員一人ひとりに起きていることの背景までは、eNPSと日々の観察だけでは分かりません。
日頃から部下をよく見ている上司であっても、本人が上司には話せないこともあります。
だからこそ、
「測る」だけではなく、
「気づく」。
そして、その次に、
「聴く」。
ことが必要になります。
数値の背景にある「声」を聴く
例えば、eNPSの数値が低下している部署があったとします。
「この部署に何か課題があるかもしれない」
ということは分かります。
しかし、その原因が何なのかは、数値だけでは分かりません。
観察からの憶測も憶測の域を越えられません。
人間関係なのか。
業務量なのか。
上司との関係なのか。
将来への不安なのか。
評価への不満なのか。
あるいは、複数の要因が重なっているのか。
その背景を知るためには、実際に社員の声を聴く必要があります。
そして、その際には、社内の上司や人事には話しにくいことを、第三者には話せる場合もあります。
「人間関係の問題だと思われていたけれど、実際には業務量の偏りが大きかった」
「若手の意欲が低いと思われていたけれど、本当は将来への不安を抱えていた」
「コミュニケーション不足と言われていたけれど、社員は『話しても変わらない』と感じていた」
組織の課題は、表面に見えている現象だけでは、本当の要因が分からないことがあります。
だからこそ、必要に応じて、カウンセラーなどの第三者が丁寧に話を聴くことにも意味があります。
K&Aプロジェクトが大切にしていること
K&Aプロジェクトでは、「測る」「聴く」を提供しています。
社員の皆さまへのカウンセリングやヒアリングを通じて、働く人の声を丁寧に聴くことを大切にしています。
社員一人ひとりが安心して話せる場をつくり、その中から見えてくる組織全体の傾向や課題を、個人が特定されない形で整理する。
そして、職場環境や組織の改善を考えるための材料として活かしていく。
私たちは、そのような支援を行っています。
ただし、「気づく」ことは、日々職場に居る人にしかできません。
日々社員と共に居る人が、一人ひとりの社員に目を向けること。
その人の「らしさ」を知ろうとすること。
小さな変化に気づくこと。
そして、勝手に判断せず、本人の話を聴くこと。
こうした日々の積み重ねがあってこそ、公平という考え方が、実際の職場で生きてくるのだと思います。
前回の記事でお伝えした、
「公平とは、違いを認め、その違いを合理的に扱うことである」
という考え方。
そのための最初の一歩は、意外なほどシンプルです。
まず、
一人ひとりの違いを知ること。
そのために、
毎日、今より+6秒。
朝、部下に「おはよう」と声をかけながら、+3秒。
夕方、「お疲れさま」と声をかけたあと、+3秒。
その小さな習慣が、部下の「らしさ」を知ることにつながります。
そして、その人の小さな変化をキャッチすることにつながります。
公平な組織づくりは、特別なことから始まるとは限りません。
今日、目の前にいる部下に、今より少しだけ目を向ける。
まずは、
+6秒から始めてみませんか。





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