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もし織田家がタレントマネジメントシステムを導入したら〜本能寺の変は防げたのか?〜

〇急成長企業が抱える人材マネジメントの課題

前回のブログ「もし戦国武将をC○Oにするなら?」が思いのほか反響をいただきまして、特に「実務に活かせる」「自社の状況と重なる」という声が多く寄せられました。歴史好きのビジネスパーソンって、意外と多いんですね。

さて、今回はその続編として、織田家という急成長企業の人材マネジメントに焦点を当ててみたいと思います。

織田信長、この人は本当にすごい経営者でした。尾張一国の小大名から、わずか20年足らずで天下統一目前まで勢力を拡大。現代で言えば、地方の小さなベンチャー企業が、あっという間に業界トップに躍り出たようなものです。

この急成長を支えたのは、秀吉、光秀、勝家、利家といった優秀な家臣団。いわば、超優秀な幹部チームです。ところが、最終的に信長は明智光秀の謀反により本能寺で命を落とします。

ちょっと待って。優秀な人材が揃っていたのに、なぜ?

これって、現代企業でもよくある話じゃないでしょうか。優秀な社員が突然辞める、幹部同士が対立する、組織が急に混乱する...

もし織田家に現代的なタレントマネジメントシステムがあったら、この悲劇は防げたのか? DXコンサルタントとして数多くの中小企業の組織開発に携わってきた経験から、この問いを真剣に考えてみたいと思います。


第1章:織田家の人材課題〜急成長組織特有の問題〜

1-1. 優秀な人材は揃っているが...

織田家の家臣団を見ると、驚くほど多様で優秀な人材が揃っています。

まずベテラン層。柴田勝家は織田家の古参重臣で、信長の父・信秀の時代から仕えてきた武勇に優れた武将です。一方、佐久間信盛も古参の重臣でしたが、後に石山本願寺攻めでの不手際により追放されることになります。

中堅実力派を見ると、これがまた多彩です。羽柴秀吉は農民出身ながら才覚で出世し、中国攻めの総大将にまで上り詰めました。明智光秀は浪人から登用された知将で、畿内統治という重要な役割を担っています。丹羽長秀は実務能力に優れた堅実派、滝川一益は忍者出身とも言われる外様の有能な武将です。

次世代も育ってきています。前田利家は若い頃に素行不良で一度追放されたものの、後に北陸方面を任される重要人物になります。森蘭丸は信長の小姓として将来を嘱望される若手のホープです。

この多様性こそが織田家の強みでした。出自を問わず、実力で人材を登用する信長の方針は、まさに現代で言うダイバーシティ経営そのものです。農民出身の秀吉が出世できる組織って、当時としては革命的だったんですよ。


1-2. 急成長に伴う組織の歪み

しかし、急成長企業には特有の問題があります。織田家も例外ではありませんでした。

まず、人材の可視化ができていないという問題。誰がどんな能力を持っているのか、各人のキャリア志向は何か、後継者候補は誰なのか...こういった情報が整理されていませんでした。

次に、評価基準が属人的だったこと。信長の気分次第で評価が変わる、明確な評価基準がない、フィードバックも場当たり的。これ、現代企業でもよく見る光景じゃないですか? 「社長の機嫌次第」みたいな会社、今でもありますよね。

さらに、リテンション施策の欠如も深刻でした。優秀な人材をどう繋ぎ止めるか、キャリアパスが不透明、不満を吸い上げる仕組みがない。光秀のような優秀な人材が不満を溜め込んでいても、それに気づく仕組みがなかったんです。

そして何より、後継者計画がない。信長の後は誰が継ぐのか、各方面軍の後継者は誰なのか、突然の事態への備えがない。これが最終的に大きな混乱を招くことになります。

これらの問題、実は現代の急成長スタートアップや、事業拡大期の中小企業でもよく見られるんです。

「優秀な人材はいるんだけど...」という悩みを抱えているところは多いですよ。


1-3. 本能寺の変という悲劇

そして、1582年6月2日。あの有名な本能寺の変が起きます。明智光秀の謀反により、信長は本能寺で自害しました。

なぜ光秀は謀反を起こしたのか? 歴史上は諸説ありますが、タレントマネジメントの視点で見ると、いくつかの示唆が浮かび上がってきます。

信長からの度重なる叱責と屈辱的な扱い、将来への不安で自分の立ち位置が不透明、適切なフィードバックの欠如、心理的安全性のない職場環境...現代の言葉で言えば、典型的な「優秀な社員が辞める(というか暴発する)パターン」ですよね。

もしタレントマネジメントシステムがあったら、これらの兆候を事前に察知できたかもしれません 

エンゲージメントスコアが下がっている、1on1で不満が出ている、周囲から「光秀様が最近元気ない」という声が上がっている...こういったシグナルを拾えたはずなんです。


第2章:織田家にタレントマネジメントシステムを導入する

さて、ここからが本題です。具体的に現代的なタレントマネジメントシステムを織田家に導入してみましょう。「そんなの無理でしょ」って思うかもしれませんが、意外と面白い発見がありますよ。

2-1. タレントマネジメントシステムとは?

まず基本から。タレントマネジメントシステムというのは、組織内の人材を戦略的に管理・育成するための仕組みです。

人材の可視化機能では、スキル、経験、キャリア志向などを一元管理します。誰が何が得意で、どんな経験を持っていて、将来どうなりたいのか、こういった情報を整理するわけです。

パフォーマンス管理では、目標設定と評価を体系化します。「なんとなくいい感じ」じゃなくて、明確な指標で評価する仕組みですね。

後継者計画の機能もあります。トップが突然いなくなったら誰が継ぐのか、これを事前に決めておくわけです。

育成計画では、個別の成長支援プログラムを組みます。この人にはこういう経験が必要だ、というのを計画的に進めていきます。

そして、リテンション分析。離職リスクの早期検知です。「あ、この人最近元気ないな」というのを、データで把握できるんです。

こういった機能を持つシステムを、織田家に導入したらどうなるか。面白そうでしょ?


2-2. 9ボックスによる人材マッピング

さて、まず織田家の主要家臣を「パフォーマンス」×「ポテンシャル」の2軸で分析してみましょう。これ、人事の世界では「9ボックス」って呼ばれる有名な手法なんです。

簡単に言うと、縦軸に「現在の成果(パフォーマンス)」、横軸に「将来の可能性(ポテンシャル)」を取って、人材を9つのボックスに配置するわけです。



右上のボックス、つまり「高パフォーマンス×高ポテンシャル」には、羽柴秀吉がバッチリ入ります。現状の成果も抜群で、将来性も高い。まさにスター人材です。初期の明智光秀もここに入っていたはずですが、時間とともに「高パフォーマンス×中ポテンシャル」に移動していきます。これが後の悲劇につながるんです。

「中パフォーマンス×高ポテンシャル」のボックスには、前田利家と森蘭丸が入ります。利家は若い頃の素行不良で一度追放されていますが、ポテンシャルは高い。今は育成中という段階ですね。

「高パフォーマンス×中ポテンシャル」には、丹羽長秀が該当します。現状の成果は高いんですが、トップになるタイプじゃない。でも、これって悪いことじゃないんです。COOやCFOタイプの実務のプロとして、めちゃくちゃ重要な人材なんですよ。時間が経った後の明智光秀もここに移ります。

「中パフォーマンス×中ポテンシャル」には滝川一益あたりが入るでしょう。安定した成果を出す、組織の中核人材です。

そして「中パフォーマンス×低ポテンシャル」には柴田勝家が入ります。古参で忠実だけど、時代に取り残されつつある。武勇は優れるんですが、戦略性に欠けるタイプです。

最後に「低パフォーマンス×低ポテンシャル」。ここには佐久間信盛が入ります。古参だけど成果が出ていない、改善の見込みも低い。結果、信長により追放されることになります。

この9ボックス、各人の特性と適切な対応方針を考えてみましょう。



◎羽柴秀吉について

秀吉は文句なしのスター人材です。

現状の成果も抜群で、将来性も抜群。中国攻めという重要ミッションを任されて、それをバンバン成功させていく。CEOの後継者候補としても期待される人材です。

ただし、リスクもあります。野心が強すぎる可能性、独断専行の傾向...このあたりは要注意です。定期的なフィードバックとコントロールが必要ですね。

育成方針としては、さらなる大規模プロジェクトの経験を積ませつつ、外交・政治面のスキルを強化する。そして後継者育成能力の開発も重要です。トップになる人材は、次のトップも育てられないといけませんから。


◇明智光秀について

光秀は難しいケースです。

当初は高ポテンシャル人材として評価されていました。知性があって、統治能力も高い、築城技術も優れている。でも、時間とともに「上限が見えた」と判断されてしまうんです。

畿内統治という重要な役割は与えられているものの、天下人の器ではないと見なされる。「秀吉は天下人、光秀は参謀」というポジショニングです。

ここに光秀の不満が蓄積していきます。これが本能寺の変につながるわけです。

もしタレントマネジメントシステムがあれば、この「ポテンシャル評価の変化」を光秀にきちんと説明できたはずです。「あなたは天下人タイプじゃないけど、それとは別の重要な役割がある」と。


■前田利家について

利家は典型的な「伸びしろのある若手」です。

若い頃の素行不良で一度追放されているんですが、ポテンシャルを見込まれて再登用されました。北陸方面を任され、着実に成長中です。

育成方針としては、実戦経験を積ませて、大将としての器を育てていく。こういう「一度失敗したけど再チャレンジ」の事例って、組織の文化を作る上でも重要なんですよ。




△丹羽長秀について

長秀は堅実な実務家タイプです。

現状の成果は高いんですが、トップには向かない。でも、これって全然悪いことじゃありません。

現代企業でも、すべての優秀な人材がCEOを目指す必要はないんです。COOやCFOタイプの「実務のプロフェッショナル」として、組織に不可欠な存在。長秀はまさにそういうポジションです。






●柴田勝家について

勝家は古参で忠実だけど、時代に取り残されつつある人材です。

武勇は優れるんですが、戦略性に欠ける。正面突破型で、新しい戦術への対応が遅い。

活用方針としては、得意分野である武勇を活かせるポジションに配置することです。戦略立案ではなく、実行部隊の指揮を任せる。古参としての経験と忠誠心を評価しつつ、無理に成長を求めない。

秀吉のような成長株と比較しちゃダメなんです。役割の違いを明確にして、ベテランとしてのリスペクトを持って接することが重要です。


▼佐久間信盛について

佐久間は「低パフォーマンス×低ポテンシャル」に位置します。

古参だけど成果が出ていない、改善の見込みも低い。結果的に、信長により追放されることになります。

でも、これで話が終わりじゃないんです。後ほど詳しく分析しますが、佐久間は本当に無能だったのか? 実は「配置ミスマッチ」だった可能性が高いんです。これ、現代の「働かないおじさん」問題とも深く関わってきます。




2-3. キャリアパスの明確化

織田家の問題の一つは、キャリアパスが不透明だったことです。自分がこれからどういうキャリアを歩むのか、将来どうなれるのか、それが見えなかったんです。

現代的なタレントマネジメントでは、複数のキャリアパスを明示します。

まず「CEO(天下人)候補ルート」。これは羽柴秀吉のような人材向けです。小規模戦から始めて、中規模戦、方面軍司令官、そして天下人候補へ。このルートでは戦略立案、大規模組織運営、外交交渉といった経験が必要になります。

次に「エリアマネージャールート」。明智光秀、柴田勝家、前田利家のような人材向けです。実戦経験を積んで、方面軍副将、方面軍司令官、地域統治へ。必要な経験は、戦術指揮、統治能力、現地調整力です。

そして「専門職ルート」。丹羽長秀や滝川一益のような人材向けです。実務経験を積んで、特定分野のスペシャリストになり、参謀職へ。深い専門性と実務遂行力が求められます。

光秀の悲劇は、この認識のギャップにあったんです。

光秀は当初、CEO候補ルートを期待していたかもしれません。でも、信長は徐々に光秀を「エリアマネージャールート」に位置づけていました。この認識のギャップが、光秀の不満を生んだ可能性が高いんです。

もしタレントマネジメントシステムで定期的な面談とフィードバックがあれば、こう伝えられたはずです。

「光秀、あなたの強みは畿内統治のような実務マネジメントにあります。天下人を支える参謀として期待しています。秀吉とは異なる、重要な役割があるんです」

この明確なコミュニケーションがあれば、光秀の不満は緩和されたかもしれません。


2-4. リテンション施策の設計

優秀な人材を繋ぎ止めるためのリテンション施策も重要です。現代的な施策を織田家に導入するとしたら、どうなるでしょうか。

まず定期的な1on1ミーティングです。信長と各武将が定期的に面談して、悩みや不満を早期に発見する。キャリア志向をすり合わせる。これだけでも大きな効果があります。

次にエンゲージメントサーベイ。家臣の満足度を定期的に調査して、離職リスクを可視化する。組織の課題を早期に発見する仕組みです。

報酬・インセンティブの明確化も大事です。成果に応じた領地配分、評価基準の透明化、将来の報酬の見える化。「頑張ったらこうなる」というのが見えると、人はモチベーションを保てます。

そして心理的安全性の確保。意見を言える環境づくり、失敗を許容する文化、パワハラ的な叱責の抑制。これ、現代企業でも超重要なポイントですよね。

もし光秀とのエンゲージメント面談があったら、こんな展開だったかもしれません。

・・システムが警告を出します。

明智光秀のエンゲージメントスコアが低下しています

信長が驚きます。

なぜだ? 畿内統治という重要な役割を与えているのに

HR担当(いたとして)が説明します。

面談記録によると、度重なる叱責により自己肯定感が低下しているようです

信長が反省します。

そうか...わしの言い方がきつすぎたか。フォローが必要だな


このような早期発見と対処ができれば、本能寺の変は防げたかもしれません。


2-5. 緊急時のリーダーシップ人材特定

本能寺の変で露呈したのは、危機時の対応人材が明確になっていなかったことです。

1582年6月2日、本能寺の変により:

  • 織田信長が死亡

  • 後継者である長男・織田信忠も二条御所で死亡

  • 組織のトップ2人が同時に失われるという最悪の事態

この危機的状況で、織田家臣団は大混乱に陥りました。誰がリーダーシップを取るのか? 誰が組織をまとめるのか?

結果的に、羽柴秀吉が「中国大返し」という神速の行動で主導権を握り、山崎の戦いで明智光秀を討ち、織田家の実権を掌握しました。

しかし、これは秀吉の個人的な機転と行動力によるもので、組織的な対応ではありませんでした。


タレントマネジメントシステムによる危機管理人材の可視化

もしタレントマネジメントシステムがあれば、危機時に必要な能力を持つ人材を事前に特定できたはずです。


危機時に必要な能力:

能力

重要度

評価対象

危機管理能力

★★★★★

突発的な事態への対応力

意思決定の速さ

★★★★★

迅速な判断と実行

人心掌握術

★★★★★

動揺する組織をまとめる力

カリスマ性

★★★★☆

求心力とリーダーシップ

柔軟性

★★★★☆

状況に応じた臨機応変な対応

実行力

★★★★★

計画を即座に実行する力

織田家臣団の危機管理能力を評価すると、こんな感じになります。


羽柴秀吉はほぼ全項目でSランクです。危機管理能力は中国大返しという実績が証明していますし、意思決定の速さは即断即決、人心掌握術は「人たらし」の才能そのもの。カリスマ性、柔軟性、実行力、どれをとってもトップクラスです。総合評価はS、危機時のリーダーとして最適な人材です。

柴田勝家は全体的にBランクです。危機管理能力は正面突破型でBランク、意思決定の速さは慎重すぎてCランク。ただし古参としての威厳があり、与えられた任務は確実に遂行します。危機時のサポート役として機能するタイプですね。

明智光秀は緻密な計画力が強みで、危機管理能力はAランク。ただし意思決定の速さはBで、やや慎重すぎる傾向があります。知性による信頼感はありますが、カリスマ性はそこまで高くない。危機時の参謀役として機能するタイプです。

丹羽長秀は実務遂行力がSランクと突出しています。危機管理能力、意思決定の速さ、人心掌握術はいずれもBランクで堅実。カリスマ性は低いものの、実務での信頼は厚い。危機時の実務統括として欠かせない人材です。

この評価があれば、緊急時の対応プロトコルを事前に準備できます。

トップ2人が同時に失われた場合、第1優先は羽柴秀吉。全軍の指揮統括、意思決定の最終責任者、対外的な織田家の代表を務めます。

第2優先は柴田勝家。軍事作戦の実行、北陸方面の安定維持、秀吉の補佐という役割です。

第3優先は丹羽長秀。内政・兵站の維持、各方面軍の調整、組織の安定化を担当します。

参謀役は明智光秀...ですが、本件では光秀が謀反人なので該当しませんね。これは皮肉です。

もしシステムがあったら: スムーズな危機対応

実際に何が起きたか振り返ってみましょう。

6月2日、本能寺の変が発生します。でも各武将が情報を得るのに時間がかかり、誰が指揮を取るべきか不明確で、混乱と対立が発生しました。

6月6日になって、やっと秀吉が中国大返しを開始します。これは秀吉個人の判断で、他の武将は後手に回りました。

そして6月13日の山崎の戦いで秀吉が光秀を討ち、結果的に秀吉が主導権を掌握することになります。

もしシステムがあったら、こうなっていたはずです。

6月2日午前に本能寺の変が発生したら、即座に危機対応プロトコルが自動発動します。事前に整備されていた連絡網で、各武将に緊急連絡が入ります。

6月2日午後には、第1優先者である秀吉が指揮権を掌握します。事前の合意があるため、他の武将も即座に承認し、対応策を決定できます。

6月3日には全軍への指示が出ます。秀吉は中国大返しで光秀討伐、勝家は北陸の防衛維持、長秀は畿内の安定化。各武将が役割分担で動き出します。

そして6月13日の山崎の戦いでは、組織的な対応で光秀を討ち、混乱を最小限に抑えられたはずです。

システムがあれば、混乱期間が10日から1日に短縮され、権力闘争も回避され、組織の継続性が確保され、家臣団の結束も維持できたでしょう。


秀吉が主導権を握れた理由の分析

秀吉が最終的に主導権を握れたのは、まさに危機管理能力が突出していたからです:

1. 情報収集の速さ

  • 本能寺の変をいち早く察知

  • 状況を正確に把握

2. 意思決定の速さ

  • 毛利との和睦を即断

  • 中国大返しを即座に決定

3. 実行力

  • 200kmを10日間で踏破する神速の行軍

  • 兵士の士気を維持

4. 人心掌握

  • 「主君の仇討ち」という大義名分

  • 家臣団の支持を獲得

5. カリスマ性

  • 混乱する組織をまとめる求心力

  • リーダーとしての存在感


これらの能力が、タレントマネジメントシステムで事前に可視化されていれば、危機時のリーダーとして公式に指名できたはずです。


現代企業への応用: BCP(事業継続計画)としての人材配置

この教訓は、現代企業のBCP(Business Continuity Plan)にも直結します。

経営トップが突然失われた場合の対応:

1. 事前の人材評価

  • 危機管理能力の評価を実施

  • 緊急時のリーダーシップ人材を特定

  • 複数の候補を用意

2. 緊急時対応プロトコルの整備

【緊急時対応責任者】
第1優先: ○○(COO) - 危機管理能力S
第2優先: △△(CFO) - 実務統括力S
第3優先: □□(CTO) - 柔軟性A

3. 定期的な訓練

  • 緊急時対応シミュレーション

  • 各自の役割の確認

  • 連絡体制のテスト

4. 権限委譲の明確化

  • どの範囲まで決定権を持つか

  • いつまで緊急体制を続けるか

  • 通常体制への復帰プロセス


まとめ: 危機時こそタレントマネジメントが重要

本能寺の変が示すのは、平時だけでなく、危機時にこそタレントマネジメントが重要だということです。

  • 危機管理能力を事前に評価

  • 緊急時のリーダーシップ人材を特定

  • 対応プロトコルを整備

  • 定期的な訓練とアップデート

もし織田家にタレントマネジメントシステムがあれば:

  • 秀吉が公式に緊急時リーダーに指名されていた

  • 混乱を最小限に抑えられた

  • 権力闘争を回避できた

  • より早く組織の安定を取り戻せた


現代企業でも、経営トップの突然の喪失は起こりうます。その時に備えた人材配置と対応プロトコルの整備が、組織の存続を左右するのです。


第3章:各武将の詳細分析〜タレントマネジメントの視点から〜

ここからは、主要な家臣一人ひとりをタレントマネジメントの視点で詳細に分析してみましょう。

3-1. 羽柴秀吉:ハイパフォーマー/ハイポテンシャル

プロフィール:

  • 出身: 農民

  • 強み: 戦略的思考、人心掌握、柔軟な対応力

  • 実績: 姉川の戦い、長篠の戦い、中国攻め

  • 現職: 中国方面軍総大将

タレントマネジメント評価:

項目

評価

詳細

パフォーマンス

S

与えられた任務は常に期待以上の成果

ポテンシャル

S

CEO候補としての器

リーダーシップ

A

部下の士気を高める能力が高い

戦略的思考

S

中国大返しなど、状況判断が的確

実行力

S

一夜城など、スピード感のある実行

イノベーション

A

既存の枠にとらわれない発想

キャリアプラン:

  • 短期: 中国統一を完遂

  • 中期: 天下統一の主力として活躍

  • 長期: CEO(天下人)候補

リスク:

  • 野心が強すぎる可能性

  • 独断専行の傾向

  • 定期的なフィードバックとコントロールが必要

育成方針:

  • さらなる大規模プロジェクトの経験

  • 外交・政治面のスキル強化

  • 後継者育成能力の開発


3-2. 明智光秀:ハイパフォーマー/モデレートポテンシャル

プロフィール:

  • 出身: 浪人(教養ある家系)

  • 強み: 知性、統治能力、築城技術

  • 実績: 比叡山焼き討ち、丹波攻略、畿内統治

  • 現職: 畿内方面責任者

タレントマネジメント評価:

項目

評価

詳細

パフォーマンス

A

与えられた任務は確実に遂行

ポテンシャル

B

優秀だが天下人の器ではない

リーダーシップ

B

部下への配慮はあるが、カリスマ性に欠ける

戦略的思考

A

緻密な計画立案が得意

実行力

A

確実に目標を達成する

イノベーション

B

既存の手法を洗練させるタイプ

エンゲージメント分析:

  • 満足度: ↓ 低下傾向

  • 離職リスク: 警告レベル

  • 主な不満:

    • 信長からの叱責が多い

    • 自分の将来が見えない

    • 秀吉との比較で劣等感

キャリアプラン:

  • 短期: 畿内統治の安定化

  • 中期: 天下統一後の統治システム構築

  • 長期: COOまたはCTO相当の参謀職

リテンション施策(緊急):

  1. 信長との1on1面談を早急に実施

  2. 役割期待の明確化とポジティブなフィードバック

  3. 秀吉との役割の違いを明確に説明

  4. 将来のキャリアパスの提示

もしこのリテンション施策が実施されていたら:

信長: 「光秀、お前は秀吉とは違う強みがある。戦で勝つのは秀吉、勝った後の国を治めるのはお前だ」 光秀: 「...そう言っていただけると、私も自分の役割が明確になります」 信長: 「天下統一後、お前には京や畿内の安定統治を任せたい。それこそが最も重要な仕事だ」

このコミュニケーションがあれば、本能寺の変は起きなかったかもしれません。


3-3. 柴田勝家:モデレートパフォーマー/ロウポテンシャル

プロフィール:

  • 出身: 織田家古参

  • 強み: 武勇、忠誠心

  • 実績: 数々の戦で先鋒を務める

  • 現職: 北陸方面軍司令官

タレントマネジメント評価:

項目

評価

詳細

パフォーマンス

B

武勇は優れるが戦略性に欠ける

ポテンシャル

C

成長の余地は限定的

リーダーシップ

B

古参としての威厳はある

戦略的思考

C

正面突破型で戦略性は低い

実行力

A

与えられた任務は確実に遂行

イノベーション

C

伝統的な戦法を好む

活用方針:

  • 得意分野(武勇)を活かせるポジションに配置

  • 戦略立案ではなく実行部隊の指揮を任せる

  • 古参としての経験と忠誠心を評価

  • 無理に成長を求めず、現状の貢献を最大化

注意点:

  • 秀吉のような成長株と比較しない

  • 役割の違いを明確にする

  • 経験豊富なベテランとしてのリスペクト


3-4. 前田利家:モデレートパフォーマー/ハイポテンシャル

プロフィール:

  • 出身: 尾張の土豪

  • 強み: 武勇、人望、バランス感覚

  • 実績: 素行不良で一度追放されるも復帰、北陸で活躍

  • 現職: 北陸方面副将(勝家の下)

タレントマネジメント評価:

項目

評価

詳細

パフォーマンス

B

現状は中程度だが伸びている

ポテンシャル

A

将来の幹部候補

リーダーシップ

A

人望があり、部下がついてくる

戦略的思考

B

実戦経験を積んで成長中

実行力

A

与えられた任務は確実に達成

イノベーション

B

柔軟な発想力

育成プラン:

  • 現職で実戦経験を積む

  • 徐々に独立した指揮権を与える

  • 将来的には方面軍司令官へ

  • 秀吉や光秀の下で学ぶ機会も提供

特記事項:

  • 一度の失敗(追放)から学び、成長した事例

  • 失敗を許容し、再チャレンジの機会を与える組織文化の重要性を示す


3-5. 丹羽長秀:ハイパフォーマー/モデレートポテンシャル

プロフィール:

  • 出身: 尾張の土豪

  • 強み: 実務能力、堅実性、調整力

  • 実績: 内政、兵站管理、築城など多方面で活躍

  • 現職: 織田家の実務統括責任者

タレントマネジメント評価:

項目

評価

詳細

パフォーマンス

A

与えられた任務は高品質で達成

ポテンシャル

B

トップには向かないが、№2として最適

リーダーシップ

B

部下を育てる能力はあるが、カリスマ性は低い

戦略的思考

B

実務的な判断は的確

実行力

S

実務遂行能力は組織トップクラス

イノベーション

B

既存システムの最適化が得意

活用方針:

  • COOまたはCFO相当の実務責任者として活用

  • トップを目指させるのではなく、プロフェッショナルとして評価

  • 実務のスペシャリストとしてのキャリアパス提示

特記事項:

  • すべての優秀な人材がCEOを目指す必要はない

  • 実務のプロフェッショナルとしての役割の重要性

  • 適材適所の配置が組織の強さにつながる


第4章:もしシステムがあったら〜本能寺の変は防げたか?〜

ここまでの分析を踏まえ、もしタレントマネジメントシステムがあったら、織田家の運命はどう変わっていたか考察してみましょう。


4-1. 明智光秀の離反は防げたか?

システムがあれば検知できたシグナル:

1. エンゲージメントスコアの低下

明智光秀のエンゲージメント推移:
1578年: 85点(高)
1579年: 75点(中)
1580年: 65点(中)
1581年: 50点(低)←警告レベル
1582年: 30点(危機)←緊急対応必要

2. 1on1での発言記録

  • 「自分の将来が見えない」

  • 「秀吉と比較されるのがつらい」

  • 「信長様の言葉が厳しい」

3. 行動の変化

  • 会議での発言が減少

  • 他の家臣との交流が減少

  • 表情が暗くなる

4. 周囲の評価

  • 部下からの報告: 「光秀様が最近元気がない」

  • 同僚からの報告: 「光秀が信長様に不満を持っているようだ」


これらのシグナルを統合的に分析すれば、危機を事前に察知できたはずです。


必要だった対応:

  1. 信長との緊急面談

    • 光秀の不満を傾聴

    • 役割期待の明確化

    • ポジティブなフィードバック

  2. キャリアパスの再提示

    • 「秀吉とは違う重要な役割がある」

    • 「天下統一後の統治を任せたい」

    • 「畿内統治のトップという重責」

  3. 報酬・インセンティブの見直し

    • 追加の領地配分

    • 明確な評価とその理由の説明

    • 将来の報酬の約束

  4. 心理的安全性の確保

    • パワハラ的な叱責の抑制

    • 他の家臣の前での屈辱的な扱いの禁止

    • 定期的なポジティブフィードバック


結論: 本能寺の変は防げた可能性が高い


明智光秀の謀反は、突発的な感情ではなく、長期間にわたる不満の蓄積でした。タレントマネジメントシステムがあれば、これらの不満を早期に察知し、適切な対応ができたはずです。


4-2. 佐久間信盛問題:「働かないおじさん」の元祖

信長は1580年、古参の重臣・佐久間信盛を19カ条の折檻状とともに追放しました。理由は石山本願寺攻めでの不手際です。

この佐久間信盛の事例は、現代企業における「働かないおじさん」問題の元祖と言えます。


佐久間信盛と「働かないおじさん」の共通点

1. かつては活躍していた有能な人材

佐久間信盛は織田家の古参重臣で、数々の実績を持つ優秀な武将でした。信長の父・信秀の時代から仕え、長年にわたり織田家を支えてきた功労者です。

現代の「働かないおじさん」も、若い頃はバリバリ働いていた人が多いのです。新入社員時代は夜遅くまで残業し、営業成績でトップを取り、プロジェクトを成功させてきた実績があります。

2. 今のポジションで成果が出ない

佐久間は石山本願寺攻めを任されましたが、10年間も膠着状態を続け、明確な成果を出せませんでした。

現代企業でも、かつて活躍していた人が、現在のポジションでは成果を出せなくなっているケースは多々あります。DXの波についていけない、新しい営業手法に対応できない、マネジメントスキルが不足している...

3. 現状維持を優先し、リスクを取らない

佐久間が最も批判されたのは、「何もしないことで現状を維持しようとした」点です。積極的に攻めることもせず、かといって撤退するわけでもなく、ただ時間だけが過ぎていきました。

これは現代の「働かないおじさん」の典型的な行動パターンです:

  • 新しいことに挑戦しない(失敗したら評価が下がる)

  • かといって自分から退職もしない(定年まで働きたい)

  • 会議では発言せず、波風を立てない

  • 「様子を見る」「慎重に検討する」が口癖

現状のポジションを守ることが目的化してしまっているのです。


4. 時代の変化についていけない

信長の時代は、鉄砲の大量使用、新しい戦術、スピード感のある意思決定など、戦国時代の常識が次々と覆されていました。

佐久間はこの変化についていけませんでした。古い戦術、慎重すぎる判断、スピード感の欠如...時代遅れの人材になっていたのです。

現代でも同様です。DX、AI活用、リモートワーク、アジャイル開発...新しい概念やツールに対して「昔はこうだった」「これまでのやり方で十分」と抵抗する中高年社員は少なくありません。


タレントマネジメントの視点から見た真の問題

しかし、ここで重要な視点があります。

佐久間信盛は本当に無能だったのでしょうか?

答えは「No」です。彼には教養があり、織田家の歴史を知り、内政の経験もありました。問題は、「最前線の軍事作戦」という役割が彼に合っていなかったのです。

これは典型的な配置ミスマッチです。

もし明智光秀とポジションをチェンジしていたら?

ここで興味深い仮説があります。もしタレントマネジメントシステムがあり、適切な人材配置が行われていたら...

Before(実際の配置):

佐久間信盛: 石山本願寺攻め(軍事作戦の最前線)
- 結果: 10年間膠着、成果なし
- 評価: 追放

明智光秀: 畿内統治(内政・調整)
- 結果: 統治は成功するが、不満が蓄積
- 評価: 本能寺の変を起こす

After(最適な配置転換):

佐久間信盛: 畿内統治(内政・調整)
- 古参としての威厳と経験を活かせる
- 教養があり、公家との折衝もできる
- 安定志向がプラスに働く環境
- ベテランの落ち着きで領民を安心させる

明智光秀: 石山本願寺攻め(戦略的軍事作戦)
- 知略を活かした戦術立案
- 築城技術を活用した包囲戦
- 成果を出してキャリアアップ
- 野心を満たす機会

この配置なら:

  • 佐久間は「調整役」として第二の人生を歩める

  • 光秀は「戦略的攻略」で昇進機会を得られる

  • 両者とも不満なく働ける

  • 組織全体のパフォーマンスが向上

佐久間の追放も、光秀の謀反も、両方とも防げた可能性があります。

「働かないおじさん」も配置転換で活性化できる

この事例から学べる現代企業への教訓は明確です:

「働かないおじさん」は無能なのではなく、配置ミスマッチの可能性がある

典型的な配置転換パターン:

パターン1: 最前線→後方支援

  • Before: 営業最前線で新規開拓 → 若手に勝てず成果が出ない

  • After: 既存顧客管理・後輩育成 → 経験と人脈を活かせる

パターン2: プレイヤー→マネージャー(または逆)

  • Before: プレイングマネージャーで疲弊 → どちらも中途半端

  • After: 完全にマネジメント専任 → 若手の育成に集中できる

パターン3: 現場→企画・標準化

  • Before: 開発の第一線で最新技術に対応 → ついていけず生産性低下

  • After: 品質管理・標準化推進 → 過去の経験を体系化する役割

パターン4: ライン職→スタッフ職

  • Before: 部門長としてマネジメント → 時代の変化についていけない

  • After: 専門アドバイザー・相談役 → 経験を活かしたコンサル的役割


配置転換を成功させるための条件

ただし、配置転換を成功させるには条件があります:

1. 本人の納得感

  • 「左遷」ではなく「適材適所」と理解させる

  • 新しい役割の重要性を明確に伝える

  • 名誉を保てる形での転換

2. 明確な役割定義

  • 新しいポジションで何を期待するか

  • どんな成果を求めるか

  • どう評価するか

3. 段階的な移行

  • いきなり全面転換ではなく、徐々に移行

  • トライアル期間を設ける

  • 必要なスキルの習得支援

4. 組織文化の整備

  • 配置転換を「キャリアの多様性」として肯定的に捉える文化

  • 「一つの道」だけでなく複数のキャリアパスを認める

  • 年齢に関係なく適材適所を実現


佐久間信盛への対応:理想的なプロセス

もしタレントマネジメントシステムがあったら、佐久間信盛にどう対応すべきだったか:

ステップ1: 早期の問題発見(開始から2-3年)

  • エンゲージメントスコアの低下を検知

  • パフォーマンスデータで膠着状態を可視化

  • 早期の介入検討

ステップ2: 1on1での対話

信長: 「佐久間、石山本願寺攻めは難しい任務だな」

佐久間: 「はい...正直、軍事作戦よりも内政の方が得意でして...」

信長: 「なるほど、お前には別の重要な役割があるかもしれん」

ステップ3: 配置転換の提案

  • 畿内統治責任者として、光秀と交代

  • 古参としての威厳と経験を活かす役割

  • 名誉ある形での転換

ステップ4: 移行支援

  • 光秀への引継ぎサポート

  • 新しい役割での期待の明確化

  • 定期的なフィードバック

ステップ5: 新しいキャリアでの成功

  • 畿内の安定統治を実現

  • 公家との折衝で活躍

  • 組織への貢献を継続


結果: 追放ではなく、適材適所による組織の最適化


現代企業での実装:「働かないおじさん」対策

では、現代企業で具体的にどう実装すべきか:

1. タレントマネジメントシステムでの可視化

社員ID: 001
年齢: 52歳
現職: 営業部門長
パフォーマンス: C (低下傾向)
ポテンシャル: B (別の役割なら活かせる)
強み: 顧客との長期的関係構築、後輩育成
弱み: 新規開拓、デジタルツール活用
適性分析: カスタマーサクセス、育成担当が最適

2. キャリア面談の実施

  • 本人の希望を聞く

  • 強みと弱みを共有

  • 複数の選択肢を提示

3. 配置転換プランの策定

  • 現職からの段階的な移行

  • 新しい役割での目標設定

  • 必要なスキル習得の支援

4. 名誉ある形での転換

  • 「カスタマーサクセス統括」など新しい肩書

  • 重要性を組織全体に説明

  • 給与水準は維持(または緩やかな調整)

5. 継続的なフォロー

  • 定期的な1on1

  • 新しい役割での成果を評価

  • 組織への貢献を可視化


追放の前にできること:段階的アプローチ

それでも改善が見られない場合の段階的アプローチ:

段階1: 早期警告とフィードバック(6ヶ月)

  • 現状の課題を明確に伝える

  • 改善計画を一緒に作る

  • 必要なサポートを提供

段階2: 配置転換の検討(6ヶ月)

  • 別の役割での適性を評価

  • トライアル配置を実施

  • 成果を確認

段階3: 役割の縮小(6ヶ月)

  • フルタイムからパートタイムへ

  • 専門アドバイザーなど

  • 名誉ある引退の準備

段階4: 退職勧奨(最終手段)

  • 上記のステップを踏んでもなお改善がない場合

  • 十分な退職金・支援を提供

  • 次のキャリアへの橋渡し


いきなりの追放ではなく、段階的なプロセスが重要です。


まとめ:「働かないおじさん」は組織の責任

佐久間信盛の事例が教えてくれるのは:

  1. 「働かないおじさん」は配置ミスマッチの可能性がある

  2. 適切な配置転換で活性化できる

  3. タレントマネジメントシステムで早期発見・対応が可能

  4. 追放の前にやるべきことがある

「働かないおじさん」を責める前に、組織として適切な人材配置をしてきたか、問い直す必要があります。

もし織田信長がタレントマネジメントシステムを持っていたら、佐久間信盛は追放されることなく、畿内統治で活躍し、明智光秀は石山本願寺を攻略して昇進し、本能寺の変は起きなかったかもしれません。

同じように、あなたの会社の「働かないおじさん」も、適切な配置転換で再び活躍する可能性を秘めているのです。


4-3. 組織文化の改革

タレントマネジメントシステムは単なるツールではなく、組織文化の変革を伴います。

信長の織田家に必要だった文化変革:

Before(実際の織田家):

  • トップダウンの恐怖統治

  • 属人的な評価とフィードバック

  • 心理的安全性の欠如

  • 失敗は許されない雰囲気

After(理想の織田家):

  • トップダウンだが対話も重視

  • 明確な評価基準とフィードバック

  • 意見を言える環境

  • 失敗から学ぶ文化

具体的な施策:

  1. 定期的な全体会議で方針を共有

  2. 各武将との1on1面談を制度化

  3. 360度フィードバックの導入

  4. 失敗事例の共有と学びの促進


第5章:現代企業への示唆〜織田家の失敗から学ぶ〜

織田家の事例は、現代企業にも多くの示唆を与えてくれます。特に、急成長期の中小企業やスタートアップには直接的に応用できる教訓があります。

5-1. 急成長企業こそタレントマネジメントが必要

織田家型の急成長企業の特徴:

  • 創業者のカリスマに依存

  • 優秀な人材は集まるが管理が属人的

  • 急拡大により組織が歪む

  • 人材マネジメントが後回しになる

これは多くのスタートアップで見られる光景です。

私がDXコンサルタントとして支援してきた中小企業でも、似たような課題を抱えていることが多くあります:

  • 創業社長の勘と経験に依存

  • 幹部社員の不満が表面化しない

  • 優秀な人材が突然退職する

  • 後継者が育っていない

タレントマネジメントシステムの導入は、成長を続けるために不可欠です。


5-2. エンゲージメント管理の重要性

明智光秀の事例が示すのは、優秀な人材ほどエンゲージメント管理が重要だということです。

エンゲージメント低下のシグナル:

  • 発言が減る

  • 表情が暗くなる

  • 他のメンバーとの交流が減る

  • パフォーマンスは維持しているが、意欲が感じられない

これらのシグナルを見逃すと、突然の退職や最悪の場合、内部告発などの問題につながります。

現代企業でできること:

  1. 定期的なエンゲージメントサーベイ

  2. 1on1ミーティングの制度化

  3. 離職リスクの可視化

  4. 早期の対応とフォロー


5-3. キャリアパスの明確化

「自分の将来が見えない」という不安は、現代のビジネスパーソンも同じように抱えています。

キャリアパスが不明確だと:

  • 優秀な人材が他社に流出

  • モチベーションの低下

  • 組織へのロイヤリティ低下

必要なこと:

  1. 複数のキャリアパスを用意する(CEO候補だけでなく、専門職ルートも)

  2. 定期的なキャリア面談

  3. 育成計画の明示

  4. 役割期待の明確化


5-4. 心理的安全性の確保

信長の織田家に最も欠けていたのは、心理的安全性でした。

心理的安全性とは、「対人関係においてリスクのある行動をしても安全だと信じられる状態」のことです。

心理的安全性がないと:

  • 部下が本音を言わない

  • 問題が表面化しない

  • イノベーションが生まれない

  • 優秀な人材が離れる

現代企業で心理的安全性を高めるには:

  1. 失敗を責めるのではなく、学びの機会とする

  2. 異なる意見を歓迎する

  3. パワハラ的な言動を厳禁する

  4. トップ自ら弱みを見せる


5-5. 危機時の対応体制(BCP)の重要性

本能寺の変で明らかになったのは、危機時の対応体制が整備されていなかったことです。これは現代の中小企業でも大きな課題です。

経営トップが突然失われた場合、誰がリーダーシップを取るのか? どう組織を安定させるのか?

危機時対応体制がないと:

  • 突然の事態に対応できない

  • 混乱が長期化する

  • 権力闘争が起きる

  • 組織の継続性が脅かされる

必要なこと:

  1. 危機管理能力の評価と可視化

  2. 緊急時リーダーの事前指名

  3. 対応プロトコルの整備

  4. 定期的な訓練とシミュレーション

特に創業者依存の強い中小企業では、経営トップの突然の喪失に備えたBCP(事業継続計画)としての人材配置が不可欠です。

タレントマネジメントシステムは、平時の人材育成だけでなく、危機時の組織存続を左右する重要なツールなのです。


5-6. DX推進における人材マネジメント

私の専門であるDX推進においても、タレントマネジメントは重要な要素です。

DX推進で必要な人材:

  • 技術に強い人材(CTO的存在)

  • 現場を理解する人材(COO的存在)

  • 変革をリードする人材(CEO的存在)

これらの人材を:

  1. 適切に配置する

  2. 育成する

  3. モチベーションを維持する

  4. 組織に定着させる

タレントマネジメントシステムは、DX推進の成否を左右します。

実際、私がKintoneなどのシステムを導入する際も、単なるツール導入ではなく、人材の役割定義や育成計画とセットで提案します。


まとめ:タレントマネジメントが組織の運命を決める

織田家の事例を通じて見えてきたのは、どんなに優秀な人材が揃っていても、適切なマネジメントがなければ組織は崩壊するということです。

織田家に必要だったもの:

  1. 人材の可視化(9ボックスなど)

  2. 明確なキャリアパス

  3. エンゲージメント管理

  4. 危機時対応体制(BCP)

  5. 心理的安全性の確保

これらは現代企業にも共通する課題です。

特に、急成長期の企業、創業者依存の強い企業、世代交代を控える企業では、早急にタレントマネジメントシステムの導入を検討すべきです。

もし信長がタレントマネジメントシステムを導入していたら、本能寺の変は起きず、織田政権は継続し、日本の歴史は大きく変わっていたかもしれません。

同じように、あなたの会社でも、適切な人材マネジメントが組織の未来を決めるのです。


実務への応用:タレントマネジメントシステム導入のステップ

最後に、実際にタレントマネジメントシステムを導入する際のステップをご紹介します。

ステップ1: 現状分析

  • 組織の人材を棚卸し

  • 9ボックスで可視化

  • 課題の特定

ステップ2: システム設計

  • 評価制度の明文化

  • キャリアパスの設計

  • エンゲージメント管理の仕組み

ステップ3: ツール選定

  • タレントマネジメントシステムの選定

  • Kintoneなどのノーコードツールでも構築可能

  • 予算と規模に応じた選択

ステップ4: 運用開始

  • 定期的な評価とフィードバック

  • エンゲージメントサーベイの実施

  • 1on1ミーティングの定着

ステップ5: 改善と進化

  • データに基づく改善

  • 組織文化の変革

  • 継続的なブラッシュアップ


K&A Projectでは、中小企業向けのタレントマネジメントシステム導入支援を行っています。Kintoneを活用した低コストでの構築や、組織文化の変革支援まで、トータルでサポートいたします。


織田家の失敗を繰り返さないために、今こそタレントマネジメントに取り組みましょう。

執筆者プロフィール K&A Project LLC 代表パートナー DXコンサルタント / データサイエンティスト 専門: 中小企業のデジタル変革、組織開発、業務改善、タレントマネジメント支援


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