top of page

もし戦国武将をC○Oにするなら?〜最強の経営陣を組織してみた〜

〇大河ドラマ「豊臣兄弟!」から考える組織論

2026年の大河ドラマ「豊臣兄弟!」が1月4日から始まりました。主人公は豊臣秀長、つまり天下人・豊臣秀吉の弟です。「天下一の補佐役」と称された秀長を主役に据えるという、これまでにない切り口が注目を集めています。

この作品を見ながら、ふと思いました。

「もし戦国武将を現代企業のC○O(Chief ○○ Officer)として雇用できるなら、誰が適任だろうか?」

組織開発やDXコンサルティングに携わる立場として、戦国時代という究極の競争環境を生き抜いた人材の配置を考えることは、現代の組織設計にも多くの示唆を与えてくれるはずです。

今回は、戦国武将たちを現代企業の経営陣(C-Suite)に配置するという思考実験を通じて、組織における役割分担と人材配置の本質について考えてみたいと思います。


〇C-Suiteとは?経営陣の役割を整理する

まず、現代企業におけるC-Suite(最高経営責任者層)の主要な役割を整理しておきましょう。


  • CEO(Chief Executive Officer / 最高経営責任者): 企業全体のビジョン策定と意思決定

  • COO(Chief Operating Officer / 最高執行責任者): 日々のオペレーション管理と実行

  • CFO(Chief Financial Officer / 最高財務責任者): 財務戦略と資金管理

  • CTO(Chief Technology Officer / 最高技術責任者): 技術革新とデジタル戦略

  • CMO(Chief Marketing Officer / 最高マーケティング責任者): ブランディングと市場開拓

  • CHRO(Chief Human Resources Officer / 最高人事責任者): 人材戦略と組織文化


それでは、各ポジションに最適な戦国武将を配置していきましょう。


〇CEO: 徳川家康 〜長期的視点と持続可能な経営〜

なぜ家康がCEOなのか?

当初、CEOには破壊的イノベーターである織田信長を想定しました。確かに信長には明確なビジョン「天下布武」があり、決断力と革新性を兼ね備えています。楽市楽座、鉄砲の大量採用など、既存の常識を打破する力は圧倒的です。

しかし、CEOに求められるのは単なる革新性だけではありません。持続可能な組織を作り、長期的に成長させる能力こそが重要です。

徳川家康は260年続く江戸幕府の礎を築きました。彼の経営スタイルは:

  • 長期的視点: 「人の一生は重荷を負うて遠き道を行くが如し」

  • 忍耐力と計画性: 人質時代の屈辱を耐え抜き、機を見て動く

  • リスク管理能力: 三方ヶ原の敗戦など、失敗から学ぶ姿勢

  • 制度設計力: 幕藩体制という持続可能なシステムの構築

現代で言えば、短期的な株価上昇よりも長期的な企業価値向上を重視する経営者像です。


〇COO: 豊臣秀長 〜天下一の補佐役〜

秀長の「調整力」という武器

大河ドラマの主人公である豊臣秀長は、まさにCOOの理想形です。

「もし秀長が長生きしていれば、豊臣家の天下は安泰だった」と言われるほど、その実務能力と調整力は高く評価されていました。

秀長の強みは:

  • 実行力: CEOのビジョンを具体的な施策に落とし込む

  • 調整力: 利害関係者間の利害を調整し、組織を円滑に動かす

  • 現場理解: 武将たちの実情を理解した上での采配

  • 献身性: 自らが前面に出ず、組織全体の最適化を優先

現代企業でも、華やかなCEOの裏で組織を回すCOOの存在は不可欠です。秀長はその象徴的存在と言えるでしょう。


〇CMO: 豊臣秀吉 〜ブランディングの天才〜

「人たらし」のマーケティング力

秀吉をCMOに配置したのは、彼の圧倒的なブランディング能力とストーリーテリングの才能によるものです。

  • 最高のブランドストーリー: 農民から天下人へ、という成り上がり物語

  • 演出力: 黄金の茶室、大坂城など、見せ方の天才

  • 関係構築能力: 「人たらし」と称される人心掌握術

  • 市場開拓: 中国大返しなど、ピンチをチャンスに変える発想力

現代で言えば、Appleのスティーブ・ジョブズのようなプレゼンテーション能力と、顧客との感情的なつながりを作る力を持っています。

ブランディングとマーケティングは、製品の価値だけでなく、その物語と体験を売ることです。秀吉はまさにその達人でした。


〇CFO: 前田利家 〜堅実な財政運営〜

加賀百万石を築いた財務手腕

CFOには、当初、石田三成も候補に挙げました。検地などの行政手腕やシステム構築能力は素晴らしいものがあります。

しかし、CFOに求められるのは単なる制度設計だけでなく、実際の財政運営と資産形成の実績です。

前田利家の強みは:

  • 実績: 加賀百万石という豊かな領地を築いた

  • 堅実性: 派手さはないが着実に富を蓄積

  • バランス感覚: 秀吉と家康の間で中立を保ち、政権を支えた

  • 長期的視点: 子孫に安定した財政基盤を残した

現代企業で言えば、短期的な利益追求ではなく、財務の健全性を保ちながら企業価値を高めていくタイプのCFOです。

また、利家は人望もあり、他部門との調整もスムーズにできる点も重要です。財務部門が孤立して「コスト削減の鬼」になってしまうのではなく、組織全体の最適化を考えられる人材です。


〇CTO: 明智光秀 〜知性と技術の融合〜

インテリ武将の技術革新

明智光秀をCTOに配置したのは、彼の知性と技術への理解、そして現場感覚の融合にあります。

  • 知識人: 当時屈指のインテリで、新しい知識や技術への理解が深い

  • 技術革新: 築城技術など、新しい技術の導入と実装

  • システマティックな思考: 緻密な計画性と論理的アプローチ

  • 現場理解: 実戦経験豊富でありながら理論にも強い

現代のCTOに求められるのは、単なる技術オタクではなく、技術を事業にどう活かすかを理解している人材です。光秀は武将として現場を知りながら、技術革新を推進できる稀有な存在でした。

興味深いのは、信長という革新的だが短気なCEOの下では光秀は本能寺の変を起こしましたが、家康のような忍耐強く理性的なCEOの下なら、その能力を十分に発揮できるはずです。

これは現代企業でも重要な示唆を与えてくれます。優秀な技術者が活躍できるかどうかは、CEOとの相性や組織文化に大きく依存するのです。


〇CHRO: 毛利元就 〜人的資本経営の先駆者〜

「三本の矢」の教えと人材配置戦略

CHROには毛利元就を配置しました。これは、彼が戦国時代に人的資本経営を実践していたからです。

毛利元就の人材戦略:

  • タレントマネジメント: 長男・隆元に内政、次男・元春に武略、三男・隆景に知略という機能別配置

  • 組織文化の醸成: 「三本の矢」の教えで協働の重要性を浸透

  • 後継者育成: それぞれの強みを活かした育成方針

  • 適材適所: 属人的スキルを機能として分割し、組織化

現代で言えば、ジョブ型雇用やロール定義の先駆けとも言えます。

元就は、息子たちそれぞれの個性と能力を見極め、最適な役割を与えました。これは現代の人事戦略における「強みを活かす配置」そのものです。

また、弱小国人領主から中国地方の覇者へと成長した元就自身の経験は、組織の成長フェーズにおける人材育成の重要性を体現しています。



〇最強C-Suite布陣の共通点

ここまで、各ポジションに戦国武将を配置してきました。改めて整理すると:

  • CEO: 徳川家康 (長期ビジョン、持続可能性)

  • COO: 豊臣秀長 (実行力、調整力)

  • CMO: 豊臣秀吉 (ブランディング、市場開拓)

  • CFO: 前田利家 (財務健全性、資産形成)

  • CTO: 明智光秀 (技術革新、現場理解)

  • CHRO: 毛利元就 (人的資本経営、育成力)

この布陣の強さは明らかですが、実はもう一つ重要な共通点があります。

全員が「叩き上げ」である

この6人に共通するのは、誰一人として「生まれ持っての殿様」ではないということです。

  • 家康: 人質という屈辱から天下人へ

  • 秀長・秀吉: 農民から武士へ、さらに天下人へ

  • 利家: 一度は追放され、復帰して加賀百万石へ

  • 光秀: 浪人から信長の重臣へ

  • 元就: 弱小国人領主から中国地方の覇者へ

全員が不遇の時期を経験し、そこから這い上がってきた人材です。


不遇の経験がもたらすもの

この「不遇経験」が、彼らの強さの源泉となっています:

  1. 現場感覚と共感力: 下から見た組織を知っているから、現場の痛みが分かる

  2. 危機管理能力: 最悪の状況を経験しているから、リスクに敏感

  3. ハングリー精神: 安定を当然と思わず、常に改善を求める姿勢

  4. 変化への適応力: 環境の激変を生き抜いてきた経験

  5. 実力主義の体現: 血筋ではなく能力で這い上がった実績

逆に、生まれながらの殿様(いわゆる御曹司)には、これらの視点が欠けがちです。既得権益に縛られ、現状維持バイアスが働き、変革を推進できないケースが多いのです。


〇現代ビジネスへの応用

DX推進における「叩き上げ人材」の重要性

私がDXコンサルティングや組織開発の現場で感じるのは、本当に変革を成し遂げる経営者は、往々にして苦労人であるということです。

創業者や、修羅場をくぐり抜けた二代目経営者は、変化への恐れよりも、変わらないことへの危機感が強い傾向があります。

一方で、安定した環境で育ったエリート経営者は、理論は完璧でも、泥臭い実行局面での粘り強さに欠けることがあります。


サラリーマンのキャリア戦略への示唆

この「戦国武将C-Suite」分析は、一般のサラリーマンにとっても有益な示唆を与えてくれます。

1. 自分の「不遇期」を活かす

左遷、プロジェクト失敗、部署異動...これらは決してマイナスではありません。家康の人質時代、光秀の浪人時代に相当する貴重な経験です。

その経験があなたを強くし、現場感覚を磨き、危機管理能力を高めてくれます。

2. 目指すC○Oの役割を見極める

すべての人がCEOを目指す必要はありません。自分の強みと経験から、どの役割が最適かを考えましょう:

  • CEO志向: 家康型の長期戦略か、信長型の破壊的革新か

  • COO志向: 秀長型の調整力と実行力を磨く

  • 専門職志向: CMO、CTO、CFO、CHROとして特定分野のプロになる

3. 「叩き上げ」のアドバンテージを自覚する

もしあなたが苦労してキャリアを築いてきたなら、それは強みです:

  • 現場を知っている

  • 修羅場を経験している

  • 既得権益に縛られない視点を持っている

これらは、エリート街道を歩んできた人には得られない財産です。

4. 役割特化型のキャリア形成

毛利元就の息子たちのように、特定機能のプロフェッショナルになる道もあります:

  • CMOを目指すなら秀吉型のストーリーテリング能力

  • CTOを目指すなら光秀型の技術×現場理解

  • CHROを目指すなら元就型の人材育成力


組織設計への応用

経営者や人事部門の方々には、この分析から以下のような組織設計の原則を導き出すことができます:

1. C-Suiteには多様なバックグラウンドを

同質的な経営陣ではなく、異なる経験と視点を持つメンバーを配置することで、組織の強靭性が高まります。

2. 「修羅場経験」を意図的に設計する

将来のC-Suite候補には、意図的に修羅場を経験させることも重要です。順風満帆なキャリアではなく、失敗や挫折から学ぶ機会を与えましょう。

3. 役割に応じた適性を見極める

すべての優秀な人材をCEO候補にする必要はありません。COO、CTO、CHROなど、その人の強みに応じた役割を用意することが、組織全体の最適化につながります。


〇まとめ:知行合一の組織づくり

今回の思考実験を通じて見えてきたのは、最強の組織とは、多様な経験と能力を持つ人材が、最適な役割で協働する組織だということです。


私が常に大切にしている「知行合一」の考え方は、まさにこの戦国武将たちが体現しています。理論だけでなく、実践を通じて学び、成長し、組織を動かしてきた人材こそが、真の変革をもたらすのです。


「豊臣兄弟!」を見ながら、秀吉と秀長の役割分担、そして彼らを取り巻く武将たちの個性と能力配置に注目してみると、また違った楽しみ方ができるかもしれません。

そして、あなた自身のキャリアや組織づくりにおいて、この戦国武将の知恵をどう活かせるか、考えてみてはいかがでしょうか。

執筆者プロフィール K&A Project LLC 代表パートナー DXコンサルタント / データサイエンティスト 専門: 中小企業のデジタル変革、組織開発、業務改善


オンライン相談(無料)
1時間
今すぐ予約

コメント


bottom of page