健康経営は「もう無理…」と感じたら読むコラム― 2026年の取り組みは戦略マップから考えよう ―
- AKI IMAIZUMI

- 15 時間前
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今年も残りわずかとなりました。
来年の健康経営推進計画や、2027年健康経営優良法人認定申請を見据え、頭を悩ませているご担当者様も多いのではないでしょうか。
2026年健康経営優良法人認定の申請に取り組んだ中小企業のご担当者様から、共通して聞かれるのが、
「とてもわが社の規模では、申請項目に匹敵する制度や仕組みを整えるのは難しい」
という声です。
申請項目を一つひとつ確認していくと、非現実的に感じる内容があるのも事実です。
私自身、実務に携わる中で同様の違和感を覚えることがあります。
「すべて整える」のではなく「自社に必要なものを選ぶ」
だからこそ、健康経営戦略マップ2025改訂版が重要な意味を持ちます。
戦略マップを、自社の経営方針に基づき、取り組むべき施策を迷いなく選択するためのフレームとして使いませんか?
「わが社は何を目指しているのか」
「その実現のために、従業員にどのような状態で働いてほしいのか」
「そのために、会社としてどのように健康を支えるのか」
戦略マップを右側(経営方針➡健康経営の目標➡推進方針)から作成することで、
健康経営は福利厚生ではなく、経営戦略となり得ることをお伝えしてきました。
年度計画で必ず押さえたい2つの軸
1年単位で取り組みを検討する際、欠かせないのは次の2つの視点です。
• 従業員の健康課題に対する直接的な支援(制度・施策)
• 健康風土・組織文化を意図的につくる取り組み
2026年健康経営優良法人評価項目には、治療、出産・育児、介護、女性の健康課題と仕事の両立など、ライフイベントへの具体的な対応を求める項目が増えました。
今後はさらに、従業員一人ひとりの人生に企業がどう向き合うのかが問われていくでしょう。
制度だけでは足りない。問われるのは「相談できる組織」かどうか
すべての事態に対応できる完璧な制度を事前に用意することは、現実的ではありません。
むしろ重要なのは、想定外の出来事が起きたとき、従業員が会社に相談できるかどうかです。
「こんなことを相談したら迷惑ではないか」
「評価に影響しないだろうか」
「みんなに迷惑がかかるから、休むくらいなら辞めるべき」
こうした不安がある職場では、制度の有無に関わらず退職を選択したり、
例え制度があっても使わずに退職を選ぶ。
この“相談できるかどうか”を左右するのが、健康風土です。
健康経営優良法人においても「対象者が制度を利用したか」否かを問われるのは、
正に健康風土の確認といえます。
健康風土の‘サポート’は「現場任せ」は、いまやリスク
ここで強調したいのは、
サポートや、その礎となる信頼関係の醸成を、従業員同士の自発性に委ねたままにすること自体が、今の時代ではリスクである
という点です。
かつては、日常のコミュニケーションは「現場で自然に育つもの」と考えられてきました。
しかし、働き方の多様化、リモートワークの普及、価値観の多様化が進む現在、関係性づくりを現場に丸投げすることは、分断や孤立を見過ごすことにつながりかねません。
“お互い様”は自然には生まれない
私は産業カウンセラーとして、また治療と仕事の両立支援コーディネーターとして、
メンタルヘルス不調や、メンタル以外の疾病による休職・復職を抱える職場の上司の悩みをお聞きする機会があります。
共通して聞かれるのは、
「休職・復職する社員と、他の従業員との関係性がもともと良くないため、協力が得られない」
「制度はあっても、現場の従業員に負荷がかかるのは事実で、不満や不公平感が噴出してしまうのが現実」
という声です。
つまり、“お互い様”の風土は、制度が整った後に勝手に育つものではありません。
企業が意図的に育てなければ、現場には根づかないのです。
企業に求められるのは「場づくり」と「関係性づくりの促進」
これからの健康経営において、企業に求められるのは
まずは、「誰もがキャリアの中で、何かと仕事を両立するのが当たり前だからこそ、両立をお互いに助け合うことが当たり前」という共通認識を持つ場をつくること
そして、
• 関係性が生まれる機会をつくること
• ストレスチェック組織分析や社内アンケートで現場の状態を定期的に把握すること
• 必要に応じて、関係性を調整し、仕組みとして定着させること
例えば、
• 上司と部下が1対1で話せる場(1on1)
• 同じ状況や経験者と情報交換できる部署横断の対話の場やつながる仕組み
• 感謝や称賛を可視化する仕組み
• 困りごとを早期に拾い上げる仕掛け
こうした「仕組み化された関係性づくり」こそが、健康経営戦略マップにおける健康風土の醸成につながります。
戦略マップが示すメッセージ
健康経営戦略マップ2025改訂版が私たちに示しているのは、
「健康風土は、企業が主体的につくるもの」
という、明確なメッセージではないか、と私は考えます。
健康課題への施策と、組織風土づくり。
この2つを意図的に、戦略的に進めることが、2026年の健康経営の成否を分ける鍵になります。
まずは、戦略マップを作成しながら、
「自社は関係性づくりを現場任せにしていないか」
振り返ってみませんか?






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