「その言葉、うちの会社にも関係あります」──フジテレビ問題で注目の“人権キーワード”解説
- 吉田 薫
- 1 日前
- 読了時間: 4分

フジテレビの問題は、大企業の特殊な話──ではありませんでした。
「人権」という言葉が、あらためて注目された今回の報告書。
出てきた用語をよく見ると、「あれ、これウチの職場にも当てはまるかも…」というものばかり。
本記事では、難しそうに見える“人権キーワード”を、中小企業の視点で読み解きます。
フジテレビ問題で注目された“人権用語”とは?
2025年春、フジテレビを揺るがしたハラスメント問題。その調査報告書には、「業界ノリ」や「ガバナンス軽視」といったワードとともに、意外と見過ごされがちな“人権用語”も数多く登場しました。
この記事では、あらためて今回の事件を通じて注目された人権関連の用語をわかりやすく解説。特に中小企業が見落としがちな視点や、日々の業務にどう関係するのかも合わせて紹介します。
1. パワーハラスメント(パワハラ)
◆ 意味:
職場における地位や立場を利用し、継続的に精神的・身体的な苦痛を与える行為。厚労省による分類では、「身体的な攻撃」「精神的な攻撃」「過大な要求」「過小な要求」「人間関係からの切り離し」「個の侵害」などが該当します。
◆ フジテレビでの事例:
報道によれば、上司による暴言や部下の人格を否定する発言が横行していたとされ、まさに典型的なパワハラが放置されていた状態でした。
◆ 中小企業への教訓:
「うちは少人数だから言いにくい」「昔はこんなの普通だった」では通用しません。パワハラは職場崩壊の引き金になります。
☑対策のヒント:
毎年のハラスメント研修を簡易版でも継続
日報・面談でのストレスサインの可視化
2. インクルージョン
◆ 意味:
「多様性(ダイバーシティ)」を前提に、異なる価値観や背景を持つ人々を排除せず、職場に溶け込ませる(包摂する)という考え方。単なる“多様性の受容”にとどまらず、“共に活かす”姿勢が求められます。
◆ フジテレビでの事例:
アナウンサーという職種の中でも「女性アナの私生活」に関する扱いが旧来的で、当事者の声が無視されやすい風土が指摘されました。
◆ 中小企業への教訓:
“変わった人”“違う意見”を煙たがるのではなく、多様な視点を活かす意識が企業の強さに直結します。
☑対策のヒント:
定例会議で「多数決ではなく少数意見も聞く時間」を設ける
育児・介護などライフステージの違いに配慮した制度設計
3. 表現の自由と名誉の保護
◆ 意味:
個人が自己の意見・考えを自由に発信する権利(表現の自由)は、憲法上の重要な人権ですが、他人の名誉や尊厳を侵害しない形で行使される必要があります。
◆ フジテレビでの事例:
SNSでのプライベート晒しや、スタッフ間の会話の中で“ネタ”として当事者の事情が語られるなど、「表現」と「侵害」の境界線が曖昧な実態が問題視されました。
◆ 中小企業への教訓:
「ちょっと言い過ぎた」「冗談のつもりだった」で済まされない時代です。
☑対策のヒント:
社内チャットのガイドライン整備
オフライン会話でも名誉毀損や侮辱に該当する表現を共有しておく
4. セクシュアル・ハラスメント(セクハラ)
◆ 意味:
性的な言動により相手に不快感を与え、就労環境を悪化させる行為。本人の意図の有無に関わらず、“受け取った側”が不快と感じたらアウトです。
◆ フジテレビでの事例:
「芸能界だから」という業界ノリの中で、明らかに不適切な言動が常態化していたことが問題となりました。
◆ 中小企業への教訓:
「男女関係ないよね」「フランクな職場だから」では済みません。全員が安心して働ける空気を守る必要があります。
☑対策のヒント:
年齢・性別に関係ない“受け手基準”の理解を全社員で共有
お酒の席・SNS投稿にも注意喚起
5. プライバシー権
◆ 意味:
個人の私生活に関する情報をコントロールする権利。SNS・カメラ・LINE・GPSなど、現代のツール使用によって容易に侵害されるリスクがあります。
◆ フジテレビでの事例:
タレントのプライベートに関わる内部情報が共有・拡散されたことにより、精神的苦痛が拡大したとの指摘も。
◆ 中小企業への教訓:
社員同士のLINEや社内メールのスクショ共有も、場合によっては重大な人権侵害となりえます。
☑対策のヒント:
業務とプライベートの線引きを研修で確認
個人情報の取扱ルールを簡潔に整備
6. おわりに:人権は“遠い話”ではない
「人権」と聞くと、中小企業では「うちには関係ない」「大企業や政治の話では?」と思われがちです。でも実際には、
会議での発言権
冗談で済ませた一言
仕事の割り振り
無意識の偏見
など、日々の言動やルールに直結しています。
フジテレビ問題が教えてくれたのは、“ルールより空気”が優先された結果、組織が人を守れなくなっていたということ。
だからこそ中小企業こそ、
小さくても“守れる組織”であること
が、信頼される企業の条件になります。
大仰なことではありません。今日から、言葉の意味を知り、誰かの違和感に気づくこと。それが、守る力を育てる第一歩です。
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