フジテレビ・日産・レッドブル、3社同時「現場出身社長」の深層分析
- 吉田 薫

- 7月18日
- 読了時間: 7分

なぜ今、政治力より現場力が選ばれたのか?働く人への影響を考える
〇2025年、相次いだ「意外な人事」の真相
今年、日本のビジネス界で話題になった人事があります。
フジテレビ:清水賢治社長(64歳) アニメプロデューサー出身
日産自動車:イヴァン・エスピノーザ社長(46歳) 商品企画出身
レッドブルレーシング:ローラン・メキースCEO(47歳) F1エンジニア出身
3社とも危機的状況での社長交代。普通なら「政治力のある調整型経営者」が選ばれそうなのに、なぜ現場出身者が?
実はこの人事、働く私たちにとって重要な意味があるんです。
〇各社が抱えていた「調整不可能な課題」
フジテレビ:信頼の完全失墜
背景:中居正広問題で主要スポンサーが一斉CM見合わせ。経団連会長も「すぐには再開しない」と明言。
従来の解決法が通用しない理由
広告代理店との「調整」では限界
政治的配慮では視聴者の信頼回復不可能
根本的なビジネスモデル転換が必要
清水社長の現場経験:40年超のアニメ制作で『ドラゴンボール』『ちびまる子ちゃん』など大ヒット作をプロデュース。コンテンツの本質的価値を理解。
日産自動車:構造的な経営危機
背景:2万人削減(全従業員の15%)、17工場→10工場への統廃合が避けられない状況。
従来の解決法が通用しない理由
労働組合との「話し合い」では時間切れ
政治的配慮していては会社が潰れる
痛みを伴う決断の即断即決が必要
エスピノーザ社長の現場経験:商品企画出身として「なぜ日産車が売れないか」を肌感覚で把握。開発期間55カ月→30カ月短縮という具体策を即座に提示。
レッドブルレーシング:複雑な国際政治
背景:タイ系株主とオーストリア本社の利害対立。ホーナー前代表の20年政権終了で権力構造が不安定化。
従来の解決法が通用しない理由
文化的差異を超えた株主調整の困難
F1界の複雑な政治関係
2026年新規則での技術的優位性確保が急務
メキース氏の現場経験:F1エンジニア、FIA副レースディレクター経験。技術面で他チームを圧倒する戦略を構築可能。
3社共通:「調整」では解決不可能な構造的課題に直面

〇現場出身社長の「3つの武器」詳細分析
武器1:問題の本質を見抜く力
フジテレビ・清水社長の場合
「広告依存からの脱却」という根本解決を即座に判断
コンテンツ外販組織を新設、IP事業への転換を宣言
堀江貴文との協業に前向き姿勢(デジタル変革)
日産・エスピノーザ社長の場合
「開発スピード不足」を経営不振の根本原因と特定
55カ月→30カ月という具体的目標設定
メキシコ拠点の地政学的優位性を最大活用する戦略
レッドブル・メキース氏の場合
2026年規則変更を最大のチャンスと捉える
政治的駆け引きより技術的優位性での勝負を選択
長期的な技術開発戦略の構築
武器2:現場との信頼関係
共通する効果
「机上の空論」的な指示の激減
現場からの提案が通りやすい環境
トップダウンではなく、現場との対話重視
期待される変化
従業員のモチベーション向上
業務改善の活発化
組織全体の一体感醸成
武器3:既存利益に縛られない自由度
フジテレビ:従来の広告業界の慣習を無視した改革が可能
日産:既存の労使関係に配慮しない大胆な構造改革
レッドブル:F1政治に左右されない技術重視の経営
〇しかし、共通する「致命的弱点」も
弱点1:ステークホルダー調整力の欠如
フジテレビ
広告代理店・政治家とのパイプが弱い
メディア業界での発言力不足
株主・投資家への説明能力に不安
日産
労働組合との交渉経験不足
系列企業・サプライヤーとの関係構築困難
政府(経産省)との連携不足
レッドブル
F1界の複雑な政治関係に不慣れ
国際的株主との文化的摩擦
他チーム・FIA・FOMとの駆け引き力不足
弱点2:危機対応・メディア対応の未熟さ
共通リスク
記者会見での失言リスク
SNS炎上への対応不足
有事の際の情報収集・発信能力
弱点3:社内政治での劣勢
現実的脅威
既存幹部からの抵抗・足の引っ張り
派閥対立による組織分裂
重要な意思決定での孤立
〇成功の鍵は「現場からの圧倒的支援」
なぜ従業員の支援が決定的に重要なのか
3社の共通課題政治力の弱い現場出身社長が生き残るには、現場での圧倒的な成果しかない。数字で結果を示し、「この人でなければダメ」という状況を作り出すことが唯一の生存戦略。
各社で期待される従業員の役割
フジテレビの場合
クリエイティブな提案の積極化
コンテンツ制作の効率化・品質向上
デジタル変革への順応
日産の場合
開発プロセスの改善提案
品質向上・コスト削減への貢献
新しい働き方への適応
レッドブルの場合
技術革新への積極参加
チーム一体感の醸成
2026年新規則への対応
支援しない場合のリスク
3社共通現場出身社長が失敗すれば、多くの場合「従来型の政治力重視経営者」に戻る。その時、現場の意見は再び軽視される可能性が高い。

〇3社から学ぶ「現場支援」の具体的方法
今日からできること
積極的な情報共有
フジテレビ:視聴者・クライアントの生の声
日産:市場動向・競合情報・品質課題
レッドブル:技術トレンド・チーム内課題
新方針への前向きな協力
変革への抵抗ではなく建設的な提案
新システム・新手順への積極的適応
部署を超えた連携強化
小さな成功の積み重ね
担当業務での確実な成果創出
改善提案の実行と効果測定
成功事例の社内共有
中長期的に取り組むこと
組織文化の変革支援
現場の声が経営に届く仕組み作り
部署間の壁を取り払う努力
新しいリーダーシップスタイルの実践
自己成長への投資
専門スキルの向上
他部署・他業界への理解拡大
将来のリーダー候補としての準備
〇あなたの会社でも応用できる教訓
パターン1:技術特化型(レッドブル型)
適用可能な業種
製造業・技術サービス業
特定分野での専門性が重要な業界
成功条件
圧倒的な技術力による差別化
継続的な技術革新
結果で政治力をカバー
パターン2:コンテンツ・直販型(フジテレビ型)
適用可能な業種
小売業・サービス業・クリエイティブ業界
顧客との直接関係が重要な業界
成功条件
中間業者に依存しないビジネスモデル
顧客との直接的な価値提供
デジタル活用による効率化
パターン3:効率化・構造改革型(日産型)
適用可能な業種
あらゆる業種(特に労働集約型)
構造的課題を抱える企業
成功条件
現場を知り尽くした無駄の削減
データに基づく意思決定
短期間での成果創出
〇まとめ:「現場力経営」の時代が来た
フジテレビ・日産・レッドブルの3社が示すのは、「調整型経営」の限界です。
環境変化が激しく、複雑化した現代では:
現場を知らない経営者では正しい判断ができない
政治的配慮だけでは問題解決できない
スピード感のある改革が生存の条件
しかし現場出身社長は政治力が弱く、成功は保証されていません。
だからこそ、現場で働く私たちの支援が決定的に重要。
3社の動向を見守りながら、自分の職場でも:
建設的な提案を心がける
新しい取り組みに前向きに参加
部署を超えた協力を意識する
これらの小さな行動が、働きやすい職場作りにつながります。
そして何より、将来あなたがリーダーになった時の貴重な経験にもなるのです。
【チェック】あなたは「現場力経営」をサポートしてる?
基本的な支援ができているか
□ 新方針を理解し、周囲に説明できる□ 担当業務で確実に成果を出している
□ 建設的な改善提案を定期的に行っている
積極的な関与ができているか
□ 他部署との連携を意識している
□ 新しいシステムや手順を前向きに受け入れている□ 会社全体の視点で物事を考えている
将来への投資ができているか
□ 自分も将来のリーダー候補として成長を意識
□ 専門性を高める努力を継続
□ 組織の変革に主体的に参加
5個以上チェックが入れば、あなたは立派な「現場力経営」の推進者です!
※この記事は2025年7月時点の情報を基に作成。3社の動向は日々変化しているので、最新情報もチェックしてくださいね。




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