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ワークライフバランスと法令遵守を混同していませんか?人事担当者が知っておくべき重要な違い

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はじめに

企業の人事担当者の方々と話をしていると、ワークライフバランス(WLB)と法令遵守を混同されているケースに頻繁に遭遇します。

たとえば、過去の大きな労働問題が報道されたとき、「WLBの欠如が原因」という解説を目にしたことはありませんか?

実は、この理解は正確ではありません。そして、この混同が企業に大きなリスクをもたらす可能性があります。

本記事では、WLB推進の専門家として、この重要な違いを解説し、貴社のリスク管理と真の働き方改革に役立つ情報をお届けします。


1. WLBと法令遵守は「別レイヤー」の概念

1-1. 二層構造で理解する

多くの企業が見落としている点があります。それは、法令遵守とWLBは次元が異なるということです。

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【レイヤー2】ワークライフバランス

多様な働き方の選択肢提供・組織文化の醸成

推奨される取り組み

【レイヤー1】法令遵守(コンプライアンス)

労働基準法・労働安全衛生法・ハラスメント防止法の遵守

法的義務・違反は罰則対象

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1-2. それぞれの役割


【レイヤー1:法令遵守】

  • 性質:法的義務

  • 目的:労働者の最低限の権利保護

  • 違反時:刑事罰・行政処分・民事責任

  • 対象:すべての企業に等しく適用


【レイヤー2:ワークライフバランス】

  • 性質:推奨される取り組み

  • 目的:多様な人材の活躍・持続可能な成長

  • 未実施時:法的罰則なし(競争力低下のリスク)

  • 対象:企業が自主的に選択


重要なポイント:レイヤー1なくしてレイヤー2はあり得ません法令遵守は土台であり、WLBはその上に構築される上層階なのです。


2. ケーススタディから学ぶ教訓

2-1. 電通事件が示すもの

2015年の電通事件は、日本の労働環境に大きな影響を与えました。この事件から学ぶべき教訓は何でしょうか。


発覚した問題:

  • 月100時間を超える違法な時間外労働

  • 労働時間の過少申告(組織的な記録改ざん)

  • パワーハラスメントの放置


これは「WLBの欠如」ではありません。労働基準法違反、パワハラ防止法違反という明確な法令違反です。

しかし、多くの報道や解説では「働き方改革が必要」「WLBの重要性」という文脈で語られました。これにより、法令違反という本質が見えにくくなってしまったのです。


2-2. 制度があっても機能しない理由

興味深い事実があります。電通には事件当時、「働き方改革推進室」が存在していました。

これは何を意味するのでしょうか。

制度の整備(WLB)と法令遵守は別物だということです。いくらWLB施策を導入しても、法令遵守という土台がなければ意味がありません。


2-3. フジテレビ事例から見る「表向きホワイト」の危険性

2024年のフジテレビ問題も、同様の構造を持っています。


同社は以前から、充実したWLB制度を謳っていました

  • リモートワーク制度

  • フレックスタイム

  • 育児・介護支援

  • 働きがい改革推進室


しかし、外部調査で明らかになったのは

  • ハラスメントが常態化していた

  • 相談窓口が機能していなかった

  • 制度を使うと不利益を被る文化があっ


教訓:「制度の有無」と「法令遵守」と「実効性」は全く別の問題です。


3. なぜこの混同が起きるのか

3-1. 「働き方改革」という包括的な言葉

「働き方改革」という言葉が、すべてを一緒くたにしてしまう傾向があります。


本来、働き方改革には:

  • 法令遵守レベル(必須・罰則あり)

  • WLB推進レベル(推奨・自主的)

の両方が含まれますが、この区別が曖昧になりがちです。


3-2. 「制度」への過信

多くの企業が陥る罠があります。

「WLB制度を導入すれば、労働問題は解決する」

という思い込みです。


しかし現実は:

  • 制度があっても法令違反は起こる

  • 制度があっても使えない文化では意味がない

  • 制度は「免罪符」にはならない

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4. 貴社のリスク診断チェックリスト

自社の状況を正しく把握するために、以下のチェックリストをご活用ください。


4-1. 【必須】法令遵守チェック

これらは法的義務です。1つでも該当する場合、早急な是正が必要です。


労働時間管理

□      36協定を締結し、労働基準監督署に届出済みか

□      時間外労働の上限(月45時間・年360時間、特別条項でも月100時間未満)を遵守しているか

□      労働時間の正確な記録・管理ができているか

□      未払い残業(サービス残業)はゼロか


ハラスメント対策

□      ハラスメント防止規程を整備しているか

□      相談窓口が実際に機能しているか

□      ハラスメント発生時の対応手順が明確か

□      加害者への適切な処分を実施しているか


健康管理

□      従業員の健康状態を適切に把握しているか

□      産業医・保健師との連携体制があるか

□      ストレスチェックを実施し、結果を活用しているか

□      長時間労働者への医師面談を実施しているか


4-2. 【注意】リスク兆候チェック

法令遵守はできていても、以下に該当する場合は要注意です。

□      「頑張る文化」が強く、休暇取得に心理的障壁がある

□      長時間労働が評価につながる傾向がある

□      制度はあるが実際には使いづらい雰囲気

□      若手社員の離職率が高い(年20%以上)

□      「業界の常識」という言葉で問題を正当化している


4-3. 【推奨】WLB推進チェック

法令遵守ができている前提で、さらに以下を実施できているか確認しましょう。

□      多様な働き方の選択肢(フレックス・リモート等)があるか

□      育児・介護との両立支援が充実しているか

□      働き方の違いによる不利益がないか

□      成果で評価され、労働時間で評価されていないか

□      個人のライフステージに応じた選択が尊重されているか


5. 正しいアプローチ:当社の考え方

5-1. ステップ・バイ・ステップのアプローチ

私たちは、WLB推進を以下のステップで支援しています。


【ステップ1】法令遵守の徹底(必須・最優先)

まず、法令遵守状況の完全な可視化を行います。

  • 労働時間管理の実態調査

  • ハラスメント防止体制の評価

  • 健康管理体制のチェック

  • 法令違反リスクの洗い出しと是正計画の策定


【ステップ2】組織文化の診断

法令遵守ができている前提で、組織文化を診断します。

  • 従業員エンゲージメント調査

  • 制度と実態のギャップ分析

  • 心理的安全性の評価


【ステップ3】WLB施策の設計と実装

土台ができた上で、効果的なWLB施策を設計します。

  • 企業文化に合った制度設計

  • 管理職向けトレーニング

  • 評価制度の見直し

  • 継続的なモニタリング体制の構築


5-2. 「制度」ではなく「実効性」にコミット

私たちが重視するのは、「制度を作ること」ではなく「実際に機能すること」です。

そのために:

  • 定期的な従業員ヒアリング

  • データに基づく効果測定

  • 経営層へのフィードバック

  • 継続的な改善サイクル

を提供しています。


6. まとめ:正しい理解が企業を守る

本記事の重要ポイント

  • WLBと法令遵守は別レイヤーの概念。混同すると大きなリスクに

  • 法令遵守は土台。これなしにWLBは成立しない

  • 制度の有無ではなく実効性が重要

  • 過去の事例(電通・フジテレビ)は「WLBの問題」ではなく「法令違反

  • 正しい順序:法令遵守→組織文化診断→WLB施策


人事担当者の皆様へ

「ワークライフバランス推進」という看板を掲げるのは素晴らしいことです。

しかし、その前に自社の法令遵守状況を正確に把握していますか?

制度は整っているが、実際には機能していないということはありませんか?

真の働き方改革は、正しい理解と正しい順序から始まります。


【無料相談のご案内】

当社では、企業の人事担当者様向けに、法令遵守状況の簡易診断とWLB推進のコンサルティングを行っています。

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