フジテレビ問題からの教訓②:「見て見ぬふり」が職場を壊すとき
- 吉田 薫
- 4月21日
- 読了時間: 4分

2025年3月に公表されたフジテレビの第三者委員会による調査報告書では、「コンプライアンスより“業界ノリ”を優先する空気」とともに、「知っていたのに止められなかった組織の沈黙」が大きく問題視されました。
「誰かが気づいていた」「でも誰も止めなかった」——これがなぜ起きるのか。そしてそれを中小企業はどう防げるのか。今回は“見て見ぬふり”の職場が生むリスクと、その具体的な改善策をわかりやすく解説します。
1. 「見て見ぬふり」が起きる職場とは?
フジテレビ問題でも明らかになったように、誰かが異常を感じていても、それが表に出ないことがあります。その背景には
「自分の担当じゃないし…」
「面倒なことに巻き込まれたくない」
「上司も知ってるっぽいし、言わなくてもいいか」
といった心理的バリアがあります。そしてそれが積み重なると、職場全体に「黙っているのが普通」という空気ができあがってしまいます。
2. “沈黙の組織”が引き起こす問題
☑️ ハラスメントや不正の見逃し
誰かが傷ついていても、誰も止めない
不適切な行動が続いても「暗黙の了解」に
☑️ 若手の声がかき消される
「言ったら浮く」「悪目立ちする」と感じて沈黙
せっかくの提案や改善案も闇に埋もれてしまう
☑️ 企業の信頼と成長が止まる
問題を内包したまま進み、ある日“爆発”
炎上・内部告発・離職の連鎖が起きやすくなる
3. よくある“見て見ぬふり”の具体例(中小企業編)
●「おかしな発言を聞いたけど、誰も注意しない」
会議中の性差別的な発言や部下を小馬鹿にする言い回し。誰かが「それまずくない?」と思っていても、場の空気を壊すのが怖くて何も言えない。
●「社内の対人トラブルが業務に影響しても誰も触れない」
たとえば部内のいざこざや感情的な対立が、連携ミスや無言の分断を生んでいても、「個人間の問題」としてスルーされる。結果、チーム全体のパフォーマンスに支障が出る。
●「現場で無理が出ているが、報告すると怒られる」
明らかに人手が足りていないのに、「現場は回ってる」とされ、誰もSOSを出せない。結果、休職や退職が発生し、業務負荷がさらに増す悪循環へ。
●「上司の不適切な言動を、部下が我慢している」
パワハラ的な指示や人格否定が繰り返されても、「昔からだから」と放置される。誰も注意できず、被害者は内心で傷つきながら働き続ける。
4. 今すぐできる“沈黙対策”と風土改善
✅ 「違和感メモ」設置のすすめ
社内に「投書箱」「意見カード」「Googleフォーム」を設置し、匿名で小さな違和感を書けるようにする
記入例を提示:「上司の口調が強すぎる気がする」「〇〇の対応で不安を感じた」など
月1回、総務や経営層が確認し、集計・共有することで“声を上げても無駄じゃない”と伝える
✅ 「気になったら話していい」を明文化する
「些細なことでも話してOK」「関係者じゃなくても構わない」という文言を、社内ハンドブック・朝礼資料・掲示物に明示
会議の冒頭で「気になることありますか?」と司会が毎回促す仕組みを取り入れる
✅ 管理職の“聴き方研修”
年2回程度の社内研修で「部下の話の遮らずに聴く」「受け止めたあとに確認する」などの基本姿勢を徹底
「Yes/Noで答えられない質問」や「どう思った?」といった開かれた問いかけを練習
✅ “言い出しやすい空気”をつくる工夫
相談しづらい内容こそ「曖昧に」「柔らかく」表現できる場づくりを意識
たとえば:「ちょっと気になっただけなんですけど…」「もしかしたら勘違いかもしれませんが…」といった前置きを歓迎する文化を醸成
小さな違和感も“肯定的に受け止める”反応を経営層が率先して見せる
5. 外部サポートも味方に
沈黙の打破は、内部の力だけでは限界があることも。
産業カウンセラー:メンタルケアと組織内対話の専門家
経営コンサルタント:構造・制度・役割設計の整備支援
金融機関や自治体:無料の経営相談窓口を活用
「話すだけでも頭が整理される」「他社事例を聞ける」と好評です。
6. おわりに
フジテレビの問題も、「誰かが止めていれば防げたかもしれない」と言われました。そしてその“誰か”は、実は“みんな”だったのです。
中小企業でも、「気づいていたけど言えなかった」ことが事故のきっかけになることは珍しくありません。
小さな気づきを軽く扱わない。言える空気を育てる。それが今の時代の“強い組織”の条件です。
「誰かが言うだろう」ではなく、「自分が言ってもいい」
そんな空気に、明日から少しずつ変えていきませんか?
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