勝つことでしか、ウェルビーイングは得られないのか?──戦える組織と“幸福な職場”の関係性
- 吉田 薫
- 3月21日
- 読了時間: 4分

企業って、利益を出すのが仕事ですよね。 でも、そこにいる人たちの「ウェルビーイング」──つまり、心も体も人間関係もいい感じで整ってる状態って、どうやって生まれるんでしょうか?
『ルーズヴェルト・ゲーム』みたいな逆転劇を思い浮かべると、「やっぱ勝たなきゃダメだよな」と思うかもしれません。青島製作所がピンチからのし上がって、みんなの顔がイキイキしてたあの感じ。最近で言えば、日産が社会人野球部を復活させたニュースも、それに通じる“動き”に思えます。
でも、ほんとにウェルビーイングって“勝たないと得られない”ものなんでしょうか?
◆ 「勝つこと」は、あくまで一部でしかない
結論から言うと、「勝つ」ってウェルビーイングの一要素にはなるけど、それだけで全部満たされるってことはないんです。
たとえば会社が業績好調で、プロジェクトがうまくいったとき。
自分の頑張りがチームに貢献できたって感じられる。
結果的にお給料や待遇も良くなる。
周りとの一体感が生まれて「チームっていいな」って思える。
そういう意味では、勝利って確かに“いい気分”をくれます。 でもね、それは「自分もその勝利に関われた」って思えたときだけなんです。
もし、会社は儲かってるのに自分の仕事が評価されなかったら? もしくは、頑張りすぎて体を壊してたら?
それって、勝ってるようで、負けてる気がしませんか?
◆ 「戦える組織」=みんながイキイキ働ける組織
じゃあ、どういう組織ならウェルビーイングが高まるのか?
それは、「勝てる組織」より「戦える組織」。
● 「戦える組織」の条件
仕事と会社の目的がちゃんとつながってる
「この仕事がどう役に立ってるか」を実感できる。
たとえば、「この改善でお客さんの満足度が上がる」って分かるとモチベ上がりますよね。
挑戦しても怒られないし、失敗してもリトライできる
「チャレンジしていい」っていう空気がある。
しかも、それが制度で守られてるとさらに安心。
ちゃんと褒められる・認められる文化がある
フィードバックが一方通行じゃなくて、上司ともフラットに話せる。
評価の基準も明確で、納得感がある。
部署の垣根がなくて、助け合える
技術と営業、現場と管理部門が“壁”を作らずに連携できる。
リーダーが熱い、そしてちゃんと現場に目を向けてる
「あの人が言うならついていこう」と思える人がいると、やっぱり違いますよね。
● 戦える組織にするためのアクション
ビジョンを“翻訳”する
経営が掲げるビジョンを、それぞれの現場レベルに落とし込んで、自分ごとにしてもらう。
挑戦を「見える化」して、ちゃんと称える
挑戦したことを表に出して、「いいぞ!」って称賛する。失敗も含めてOK。
1on1を“話す場”じゃなくて“聴く場”に変える
上司が話すんじゃなくて、部下の話をじっくり聞く。仕事・気づき・気持ちの3点セットが理想。
部門シャッフルして、横のつながりを作る
異なる部署のメンバーでプロジェクトを組むことで、「会社全体の目線」が自然と育ちます。
現場→経営のルートを開通させる
社員からの提案や声が経営層に直接届くようにする。「声を届けていい」と思える仕組みが大事。
◆ 「勝つ」よりも「戦える」ことが、いい会社をつくる
もし日産が再び“誇りある企業”として再生するなら、それは「EVでテスラに勝った」からじゃないと思います。
社員ひとりひとりが、「自分のやったことが会社を動かしてる」と感じられる状態こそ、本当の意味でのウェルビーイング。
野球部の応援で一体感が生まれたり…
技術チームが「やりたいこと」に挑戦できたり…
そういう“日々のプロセス”の中にこそ、働く喜びってあるんじゃないでしょうか。
企業の逆転ストーリーって、「勝ったこと」よりも「どう戦ったか」が大事。 その中に、社員がどれだけ幸せに働けたか──その価値が、会社そのものの価値にもなるんです。
◆ 結びに:日産のウェルビーイングは、これからが本番
日産が『ルーズヴェルト・ゲーム』ばりの逆転劇を描けるかどうか──
そのカギは、「勝ったかどうか」じゃなくて、「戦う過程を社員がどう受け取ったか」にあります。
もしそれがうまくいったなら、きっと日産は“再建した企業”じゃなくて、“働きたいと思われる企業”として語られるでしょう。
そしてそれこそが、本当の意味での勝利なのかもしれません。
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