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なぜ業績好調なのに「何かがおかしい」と感じるのか?

職場の隠れた不調を7分で見抜く方法


前回のコラムで、組織の「見えない声」に耳を傾けることの重要性についてお話ししました。多くの読者の方から「確かにうちの会社にも当てはまる」「でも具体的にどう把握すればいいのか」といった反響をいただきました。

今回は、職場の感情や空気感を「科学的に」捉えるアプローチについて考えてみたいと思います。


〇従来の調査の限界


多くの企業で実施されている従業員満足度調査。しかし、こんな経験はないでしょうか。

  • 満足度は高いのに、なぜか元気がない職場

  • 数字上は問題ないのに、優秀な人材が辞めていく

  • アンケート結果と現場の肌感覚が違う

これは従来の調査が「表層的な満足度」に焦点を当てているからかもしれません。本当に知りたいのは、従業員が日々の業務の中で感じている微細な感情や、言葉にしにくい違和感なのです。


〇心理学が教える「本音の引き出し方」


組織心理学の研究では、人が本音を語る条件について多くの知見が蓄積されています。


具体的な場面設定

抽象的な質問「職場環境はどうですか?」よりも、「上司に改善提案をする時、どんな気持ちになりますか?」といった具体的な状況を想定した質問の方が、真実に近い回答が得られます。

複数の角度からのアプローチ

一つの側面だけでなく、多角的に質問することで、より立体的な組織の姿が見えてきます。例えば、心理的安全性を測る場合も、「発言のしやすさ」「失敗への寛容度」「多様性の受容」など、複数の切り口から探る必要があります。

逆転質問の効果

「この職場は働きやすいですか?」という直接的な質問と並行して、「職場で言いにくいことはありますか?」といった逆の角度からの質問を組み合わせることで、より正確な実態把握が可能になります。


〇感情の地図を描く


最近、私たちは職場の感情を「地図」のように可視化する手法を開発しました。これは従来のスコア型の調査とは異なり、職場の「空気感」を多次元で捉える試みです。


5つの感情軸

  • 発言の自由度:本当に言いたいことが言える環境か

  • 心理的安全性:失敗や批判を恐れずに行動できるか

  • 倫理的健全性:正しいことが正しく評価される風土か

  • 参加実感:自分の意見や提案が組織に反映されているか

  • 将来への希望:この組織で働き続けたいと思えるか


これらを25の具体的な質問で測定し、組織の「感情の地図」を描き出します。興味深いことに、同じ部署でも、役職や年代によって全く異なる地図が浮かび上がることがあります。


〇短時間で深層心理を探る技術


忙しい現代のビジネスパーソンにとって、長時間の調査は負担です。そこで重要になるのが「効率的に深層心理を探る質問設計」です。

私たちが開発した手法では、わずか7分程度で職場の感情を多角的に把握できます。秘訣は「交互出題形式」です。異なる軸の質問を織り交ぜることで、回答者が特定のパターンにはまることを防ぎ、より自然な反応を引き出せるのです。


〇データが語る組織の真実


実際にこの手法を導入した企業では、驚くような発見がありました。

A社の事例

表面的には順調に見えた営業部門で、実は「本音で話せない空気」が蔓延していることが判明。数値目標は達成していたものの、長期的な成長への不安を多くの社員が抱えていました。

B社の事例

離職率の高さに悩んでいた技術部門で、問題は待遇ではなく「意見を聞いてもらえない疎外感」にあることが分かりました。その後の改善施策により、離職率は大幅に改善されました。


〇測定から改善へ


感情の地図を描くことの価値は、現状把握だけではありません。どの部分に課題があるのかが明確になることで、効果的な改善策を講じることができるのです。


例えば、「発言の自由度」が低い部署には対話の機会を増やし、「倫理的健全性」に課題がある組織には価値観の再確認を行う、といった具合です。


〇まとめ

職場の「空気」は曖昧で捉えどころのないものに思えますが、適切な手法を用いれば科学的に測定し、改善することができます。


重要なのは、表面的な満足度ではなく、従業員が日々感じている生の感情に目を向けることです。そこから見えてくる組織の真の姿こそが、持続的な成長の基盤となるのです。

次回は、こうした調査結果をどのように組織改善に活かしていくか、具体的な活用事例をご紹介したいと思います。



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